第3章 大人になって-2
「帰りは奥様がお迎えに来るの?」
「あ、うん。あ、そーいや昨日俺の事話した??」
「アハッ、ゴメン。話した。とんでもない女ったらしだったって♪」
「はぁっ!?」
そんな俊輔に舌を出して笑う友美。
「嘘だよ♪ディスってないから安心しなよ。でも綺麗な奥様だね。若いよね?」
「5コ下かな。」
「そうなんだー。うまく捕まえたね!社内恋愛?」
「ああ。友美は?」
「私はちょっと遅くて去年結婚したの。俊輔も知ってると思うけど。」
俊輔は友美の名字を思い出した。
「あ、もしかして中里?中里啓介??」
「うん。」
中里啓介はやはり同級生であった。
「中3の時から付き合って、そのままゴールイン♪」
「え?マジで!?一回も別れなかったの??」
「うん。ケンカはいっぱいしたけどね。」
「スゲーな…、そうだったんだ。」
そう言いながら中3と言う事は俊輔が無視されるようになったすぐ後の事だ。その頃友美に彼氏がいただなんて知らなかった俊輔。しかも自分が知る男と結婚していただなんて驚かずにはいられなかった。
「そうだったんだ…」
「俊輔は?恭子ちゃんと付き合ってたけど、どうしたの?」
「し、知ってたの?」
「知ってたわよ。女子の間では誰と誰が付き合ってるとかの情報早いんだから。」
「そっか…。あ、もう行かなきゃ。遅刻しちゃう!」
俊輔はわざとらしく時計を見て慌てるふりをする。
「あ、逃げたなー♪じゃあそこらへん今度ゆっくりと聞かせてね?」
「あ、ああ。じゃあお願いします。」
彩香と一緒に手を振る友美に慌ただしく手を振り逃げるように去って行く俊輔は車を走らせる。
「今度ゆっくりって…どう言う意味だ…?」
保育園の送り迎えの時にゆっくり聞くつもりなのか、はたまた保育園以外で会ってとの意味なのか理解に苦しんだ。
「もしかして…これは一気に火がついちゃうパターンか!?」
もしかして大人の関係に発展するのではないかと少し妄想すると興奮してしまった。
「…んな訳ないか。」
そんな甘い夢が見れる訳はないと思った俊輔。だが妄想するのは自由だと言わんばかりに友美と抱き合う事を想像している俊輔。
「いい女になったもんなー。抱き心地良さそうだよな。すぐイッちゃいそう♪」
後で我に返った時、男と言うのは本当にどうしようもない生き物だなとつくづく反省してしまった。そんな甘い夢よりも、まず友美に伝えなければならない事がある。それを伝える為ならば、保育園の外でゆっくりと会うのもアリかな…、そう思ったのであった。