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Time Capsule
【初恋 恋愛小説】

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第3章 大人になって-1

ただの同級生のいる保育園に子供を預けに行くだけだ。それなのに少し足取りが重いのはやはり昔あることが原因で無視されたまま今に至っている事が大きい。むしろ再会しなきゃ良かったとさえ思っている。だが逆に言えば無視される原因となった事を話し合えれば蟠りは消えると言う事だ。だが昨日の友美の様子からは気にしているのは自分だけのような気もする。現にあっちから話しかけて来たのだし、その様子からは怒っている訳でもなさそうだ。20年という歳月が友美にとってはそれを過去の思い出とて消化したのかも知れない。消化しきれていないのは俊輔の方なのかも知れない。

気が重いまま彩香を後部座席のチャイルドシートに乗せ家を出発する。どちらにせよ保育園には行かなくてはならないし友美と会わなければならない。しかし友美を邪険に思うのは間違っている事は分かっている。友美は悪くない。自分が気にしているだけなのだから。

いざとなると男は弱い。保育園が近づくにつれ、もし今日は昔の事を思い出して冷たくされたらどうしようだの、無視されたら辛いだの、子供に八つ当たりされたらどうしようだの、そんな心配ばかりして憂鬱になって来た。だがもう左に曲がれば保育園だ。否応なしに保育園に入るしかなかった。

車を降り彩香を抱えて保育園に入る。
「おはようございます…」
様子を伺いながら靴を脱ぎ部屋に入る俊輔。そんな俊輔の心配をよそに友美は満面の笑みで挨拶を返して来た。
「あ、おはようございます♪」
「ど、どうも…」
頭をかき、若干照れる俊輔を見て笑う友美。
「どうしたの?照れちゃって!」
「あ、いや…」
「あ、そっか、すっかりいい女になっちゃったから照れてるんだぁ♪」
俊輔はそう戯ける友美を見てどこか安心した。
「変わってないなー、友美。」
一気に中学時代の友達と姿がダブる。明るくてハキハキした友美の懐かしい姿にようやく俊輔の顔が緩む。
「そう??まー相変わらず可愛いって事で。」
「そーいや自分の事、プリティ友美って呼んでたよね?」
俊輔のその言葉に友美が照れた。
「そんな恥ずかしい事は思い出さないでっ…。あ、じゃあ彩音ちゃんお預かりしますね。」
「あ、うん。」
俊輔は彩香を友美に預ける。
「おはよー彩香ちゃん♪今日も朝から可愛いね〜♪」
あやす友美に彩音は喜んでいた。そんな姿を見て俊輔は、さっき腹いせに彩音をいじめられたら嫌だなと思った自分に嫌悪感を覚えた。
(友美がそんな子じゃないのは良く知ってるじゃないか。馬鹿だな俺は。昔からホント、馬鹿だ。だから友美を傷つけてしまったんだ…)
俊輔はそう思いながらプリティな笑顔を見つめていたのであった。


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