第1章 あの日の後悔-5
保育園で再会してから、俊輔の頭から友美の事がなかなか離れようとしなかった。振り返ればあれだけ気が合った人間は男女問わずいなかったかも知れない。恋愛経験もそれなりに積んで来た今ならもし付き合ったなら楽しい毎日が過ごせるだろう、そう思える。しかしあの頃、恋愛がどう言うものかも分からなかったし異性を好きになる事と愛する事の違いも意味も分からなかった。いくらどう頑張っても気が合う同級生としか思えなかったに違いない。今の気持ちのまま中学時代に戻ったなら友美と自分の全ての初めてを経験したいと思えたかも知れない。初めての彼女、キス、そしてその先の事を友美と経験したならばきっと生涯友美と一緒に歩み続けていた可能性は高いと感じた。あれだけ気が合ったのだ。何をしても、どこに行っても楽しかったであろう。それに34になった友美は物凄く魅力的な女性になっていた。中学時代にはたいして気にならなかった胸もしっかりと膨らみすっかり女らしくなった肉体、男を惹きつける雰囲気…、いわゆる堪らない女へと成長していた。もしずっと付き合い続けて結婚したならばきっと毎晩抱いているだろう。もし今誘われれば抱きたい。素直にそう思った。
「な、何を考えてるんだ、俺は!?」
ふと我に返る俊輔。友美をそんな目で見てしまった自分を情けなく感じる。友美に対して失礼な行為を働いて置きながらそれを謝りもせずに抱く妄想をしてしまった自分に怒りさえ感じた。友美は今他の男性と愛し合い、そして結婚して娘の通う保育園で保母をしているのである。その現実をしっかりと弁えておかなければいけない、そう思った。自分は友美にとっては別に付き合った訳でもないただの中学時代の同級生だ。再会に浮かれて甘い事を考えてはいけない。俊輔は強くそう自分に言い聞かせた。
これから保育園の送り迎えで頻繁に会う事になるだろう。だが何も期待してはいけない。自分と友美はただの自分の娘が通う保育園の保母と保護者なのだ。あの頃のように仲良く話したい…そんな気持ちは持ってはいけない。むしろあの時の事を恨まれてても仕方がない。時が蟠りを癒してくれたとも思っていない。あの時の事をしっかりと謝罪して初めて同級生づら出来るんだと思った。いつかどこかのタイミングでしっかりと友美と話したい、そう思ったのであった。