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縺れ合った赤い糸
【幼馴染 官能小説】

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篤の願い-1


翌朝、美穂は疲れが出たのか、俺の胸の中で昼過ぎまで可愛い寝息をたて眠り込んだ。

その日は一日ゆっくりとして、週明けの月曜日にお互いに勤め先に結婚の報告をし、みんなから温かい祝福を受けた。

結婚休暇は結婚式後にと勤め先に話しをして二人で式場探しを始め、ネットで調べた式場をいくつかピックアップし、休みに二人で行く事にした。

当日、式場に行く途中で美穂がトイレに行きたいと言い、道路沿いのショッピングモールに寄った。

「俺も行くわ!連れションやな!」

「もう!健二の馬鹿ー!」

駐車場に車を留め、ショッピングモールに入りトイレの入り口で笑いながら別れた。

先にトイレを出たが少し待っても美穂はトイレから出て来る気配がなく、俺はショッピングモールの入り口までブラブラと歩き外の空気を吸っていた。

その時だった。小さな子供が親の手を離し道路に飛び出し、そこにスピードを上げた車が突っ込んできた。

『危ない』そう思った瞬間、身体が反応していた。子供を抱き抱え、まるでラグビーのトライをするように子供を道路脇に置いた瞬間、下半身に潰れる様な衝撃と何かに巻き込まれる衝撃を受け、目の前が真っ暗になった。


どれだけ時間が経っただろうか。誰かの話し声が聞こえ暗闇の中で身体がふわふわと浮いた感覚の中、ベッドに横たわる俺の姿が見えた。

その横で美穂と親父とお袋。美穂の親父さんとお袋さんもいた。美穂は泣きじゃくり、お袋さんが寄り添い、何故かみんな泣いていた。

「即死でもおかしくない状態でした…。助けた子供さんはかすり傷で済みました。出来るだけの事はすべてしましが…内臓破裂で出血がひどくて…時間の問題かと…残念です。」

『子供かすり傷でよかったな!』

そう思っているとみんなの姿がかすれ始め、ベッドの横の機械が出す音が徐々に小さくなり始め、身体の力が抜けて行った。

その時、暗闇の中から篤の声が聞こえた。

『健二!ダメや来たらダメや!』
『なんや篤や!元気にしてたか!』
『健二!本当に悪い事した!俺は罰があたったんや!親友を裏切り美穂を不幸にした!本当にごめん!本当にごめん!』
『篤、もうええって!美穂は俺が幸せにするから!もう泣くなって!』
『健二!よう聞け!もうすぐ目の前が一瞬明るくなる!その時や、力を振り絞り美穂の名前呼ぶんや!ええか!絶対美穂を幸せにしてくれ!頼む、頼むから…!美穂、健二幸せになってくれ!本当にすまんかった!』

篤の声が消え暗闇の中をさ迷っていると篤が言った通り一瞬目の前に光りが差し込んで来た。

その瞬間に身体中に熱い物が流れ、最後の力を振り絞り美穂の名前を呼んだ。

「美穂…!」

「健二ー!私…ここにいるよー!」

美穂の声が聞こえ、突然周りが騒がしくなり、機械音がはっきりと聞こえたが暗闇は続いた。

俺が意識を取り戻したのは事故から三日後だった。

「美穂…!美穂…!」

「け…健二ー!だ…誰かー!健二が…!健二がー!」

美穂の名前を呼びながらゆっくり目を開けると白い天井が目に入り、美穂の叫び声が部屋に響いていた。

「健二!よう戻って来た!よう頑張った!」「健二!頑張ったね…!」

美穂はずっと俺に寄り添い、親父達もずっと俺の目覚めを待っていてくれて、俺の生還を泣きながら喜んでいた。

「奇跡的な事です。あの状態で心肺停止から戻ってこれたなんて…。奇跡です。」

医者も驚き、俺の生命力を奇跡と言ったが、あの時の事は美穂だけに話そうと美穂の手を力強く握った。

車椅子に乗れるまで二ヶ月もかかり、リハビリを始めた頃病院の庭で美穂にあの時の話しをした。

「俺が生きてるのは篤のおかげや!あいつは俺達の幸せを願ってくれてる!美穂にもすまんかったと泣いてた!時間かかってもええから、いつか篤を許してやってくれ!」

「篤が…。そう願ってくれたのね…。」

美穂は一言つぶやき目を潤ませ小さく頷いた。


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