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青熟の車輪
【ロリ 官能小説】

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憧憬と懐愁-2

 シャワーを止め、ボディソープを手に取ったところで優里菜ちゃんと目が合った。
 「あ、あの…。自分で洗う?」
 「…洗ってくれないの?」
 「いや、僕はいいんだけどね。優里菜ちゃんは女の子で僕は一応男だし、ウチって洗いタオルとか使わない派だから素手で体中を触ることになるから…。」
 優里菜ちゃんは下唇を噛んで視線を床に落とした。
 「私の事、女だと思ってるんだ…。」
 「え?いや、あの…ちょ、えっと、ね…」
 うわあ…。イヤラシイ目で見てたと思われちゃったよ。そりゃまあ、優里菜ちゃんはとっても可愛いけど、そういうつもりは…。
 「だったら、嬉しいな。」
 僕は一瞬、彼女が何を言っているのか分からなかった。
 「早く大人になりたいの。大人の女に。」
 …ますます何を言っているのやら。
 「お父さんとお母さん、なんで喧嘩してると思います?」
 展開が読めない…。
 「さあ。男女って色々あるから。特に、夫婦って一緒に暮らしてるからなおさら衝突することが多いんじゃないかなあ。」
 僕自身、結婚には一回失敗している。
 「鷹志さん、私のハダカも撮りたいですか?」
 「はあ?」
 ワケ分からん。
 「さっき鷹志さんの部屋の前を通ったとき、パソコンの画面が見えたんです。それは、お父さんがよく見ているサイト。」
 「え…。」
 コーン、コロン。
 ボディソープが指の間から滑り落ち、水浸しのプラスチックの床に乾いた音を響かせて跳ね、転がった。
 「もう一つの画面は、動画の編集ソフトですよね?私ぐらいの歳の女の子が、ハダカで床の上で足を開いてた。」
 「…。」
 「お母さん、お父さんがそういうの見てるのをみつけるとすごく怒るんです。だから…」
 まあそうだろうな。普通のAVですらなくて、完全に違法なやつだし。
 「だからお父さん、私と遊んでくれないんです。私ぐらいの歳の女の子の相手をするとお母さんが怒るから。」
 「いや、それは…」
 違うよ、と言いかけたのをなんとか飲み込んだ。それを言ってしまったら、じゃあどうして?という展開が待ち受けているのは明白だ。そうなったとき、僕はなんと答えればいいのか。いや、答えることなど出来るのだろうか。
 10歳の女の子が出した結論。自分の年齢が問題でお父さんは構ってくれない。なんと未熟でなんと真っ直ぐな答なんだろう。10歳だからこそ、いや、今この瞬間の彼女だからこその結論を、僕は否定も肯定も出来ない。
 大人への憧憬をいだく少女。その対象である大人の一員である僕は、少女の青さ、未熟さに切なく嫉妬した。それはとっくに失くしてしまったものだから。もう取り戻せないものだから。そしていずれは彼女もそれを失うということを、僕は知っているから。
 「大人になれば、お父さんはもっと私に構ってくれる。もっと話を聞いてくれる。鷹志さんみたいに。そうでしょ?鷹志さんは私の事、子供じゃなくて、もう女だと思ってくれているんでしょ?」
 顔を上げて僕を見つめる透明な瞳に掛けるべき言葉がみつからない。でも、言葉以外で答えることなら出来るかもしれない。そして、大人になりたいと願う少女の目覚めを、ほんの少しだけ手伝えるとしたら…。失くしてしまった少年の日々を懐かしみ偲慕する、大人の僕だからこそ彼女に出来る事があるのなら。
 「ねえ、鷹志さん…。」
 僕は、床に転がったボディソープの容器を拾い上げ、必要な量より少しだけ多く掌に出した。


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