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お世話いたします……
【その他 官能小説】

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お世話いたします……-1

(1)

 休日の朝、ゆっくり温めのお風呂に浸かったあと、鏡に自身の裸身を映してみる。小柄だし、日本人らしい体型で胴長だが、体質なのか贅肉は少なくて、実年齢より、
(若く見える……)
自分でそう思う。
美人とはいえないが、
「コケシのような愛らしさと純朴さがある」
これは浅田社長に言われた言葉である。
モデルみたいな整った美人ばかりが魅力的とは限らない。
(男の好みは様々……)
だから色々な女がいる。
(私じゃないとだめな男だっているんだから……)
近頃では自分の容姿に自信めいた納得が芽生えていた。

 新田貴子40歳。
離婚して5年になる。結婚したのは30の時で、夫が初めての男だった。それまで男性との縁はまったくなかった。男と交際したことがなかったのである。高校を出て2年目の年に職場の上司に誘われて酒を飲まされ、危うく秘花を散らされそうになったことがあったが、それは付き合いといえるものではなかった。
 幼い頃からいつもみんなの後ろにいるような子どもだった。消極的な性格が縁遠くさせたともいえる。さらに、犯されかけた体験が男性への不信に繋がっていたこともあったかもしれない。
 夫とは何度か転職した職場で知り合った。無口で大人しい人で、
(私に似ている……)
親しみを感じて、ほどなく結ばれたのは女盛りの熟した肉体が自ずと閉ざされた陰門を開かせたものか。……受け入れた時、鈍い痛みを感じながら心に明るい色彩が差し込んだような心地になっていた。
 平穏な結婚生活は長くは続かなかった。一人息子、マザコン、同じ敷地内に住む義両親。……
(甘かった……)
子どもが出来なかったことで夫婦間は修復不可能になった。

 別れて2年ほどはパートと貯金で何とか生活したが、やはり正社員でないと将来が不安だ。兄夫婦が継いでいる実家には戻れなかった。
 求人広告を眺めて無為な日々が過ぎていった。ハローワークにも行ったが何の資格もないのでなかなかこれといった仕事は見つからなかった。経理も苦手、運転免許も持っていない。難しい年齢に差し掛かってもいる。介護の仕事は多いという。
(資格を取ろうか……)
何度か考えたが決断できないでいた。
 そんな時、目にとまったのが浅田工業の募集広告である。
(たしか、IT機器の……)
部品を製造している会社で、名の知れた企業である。
 関心を持ったのは募集広告の頻度であった。ここ半年、毎月のように掲載されていた。
『女性社員募集。1名。給料25万。賞与年2回。他に特別手当あり』
条件は悪くない。なのに頻繁に募集が出ている。
(長続きしないということか……)
仕事の内容は社長宅の管理業務とある。
(管理業務?……自宅に事務所があるのかしら……)
いや、ちがう。『社長宅』とある。
資格やその他の応募条件はない。
(自宅の管理……何をするんだろう……)
考えても思い浮かばない。仕事を探し始めてからまだ1度も面接すら受けていない。
(とにかく、あたってみて、だめならやめればいい)
仕事の内容がわからないのが気になったが、
(どんな内容なのか、知りたい……)
好奇の想いが湧いてきていた。

 想定外の面接。緊張しながらもその時のことは事細かに憶えている。
 電話で問い合わせると、応募が多く、状況によっては面接に至らない場合もあることを了承してほしいと言われた。履歴書選考の上、3日以内に連絡するという。
「勝手ですけれど、それでもよろしければ履歴書をお送りください」
丁寧な落ち着いた口調の女性であった。

 2日後にはその女性から面接の連絡がきて、
「浅田郁子です」
社長の奥さまで、専務の立場であることを知った。
「いつがいいかしら。新田さんのご都合に合わせるわ」
「いえ、いつでも、伺います」
「そう?それじゃ……」
日時と場所を聞いたあと、
「新田さん、食べ物に好き嫌いあります?」
「特に、ありませんが……」
意外な質問に拍子抜けしたものだ。

 就職の面接といえば、会社の応接室か会議室だが、貴子が訪れたのは渋谷の高級住宅街にある社長の自宅。時間は午後6時。案内された広い和室の応接間のテーブルには食事の用意がされてあった。
(これが、面接?……)
やがてにこやかに現われたのが社長の浅田圭吾と専務の聡子であった。2人から名刺を押し頂いて緊張に包まれた。

「気楽にしてくださいね」
上品な面立ちの奥さま。
「食事をしながらお話しましょう」
最先端企業のトップとは思えない穏やかな笑みが社長の口元に浮かんでいた。
 置かれてあるのはお弁当のようだが、塗り物の器も豪華なもので、蓋には築地でも一流の店の名が書かれてあった。
「新田さん、お酒は?」
「はい、少しは……。でも……」
「それじゃ、飲みましょう」

「すごいお料理……」
お弁当のレベルではなく、色採りも鮮やかな会席膳のようだった。
「その店の主と知り合いでね。特別に作ってもらったんですよ」
「どうぞ、召し上がって」
「いただきます……」
信じられなかった。
(面接なのに……)
いつもこういうやり方なのかしら……。


 
 

 


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