クリスマス・イブ-4
4.
閉店の時間になった。
表の立て看板のランプを消していると、敦夫が近づいて看板を店の中に運んでくれた。
「危ないこと無かったの、心配してたのよ」
「ああ、酔っ払いが相手だと、話が通じないからどうしようもない。手荒なことは出来ないし、時間ばかり掛かって、手柄にもならないし、手錠を見せて公務執行妨害で逮捕するといってどうにか収めた」
明かりを半分落としたカウンターで、並んで座った。
「クリスマス・イブだって言うのに、男やもめと行かず後家が二人並んで、冴えないわねえ」
「俺はともかく、雅子ちゃんは良い人いないのかい?」
「あたし、不器用だから・・・」
「よし、じゃ今夜は俺と付き合ってくれるか?今から帰っても、何にもねえから・・・シャンパンでも飲もうか?」
敦夫は携帯を取り出した。
「ああ、池袋北署の浦上だ。マネージャー一寸呼んで・・・・。アア俺だ、今日は混んでるんだろうな、二人で行くから、テーブル何とかしてくれよ・・・そっ、有難う、じゃ」
敦夫と腕を組んで歩くのは、初めてだ。
敦夫は、慣れた足取りで雅子をリードする。
「義兄さん、女の人と歩き慣れてるわね」
「そんなこたぁねえよ、直美と歩いているみたいで、歩き易いよ」
(また、直美姉さんか・・・)
敦夫の肘が、歩調に合わせて雅子の乳首に当たる。
(こんなことしてたら、イッちゃいそう)
疼きが、シュクシュクと子宮に流れていく。
「まあ、何はともあれ、メリークリスマス!!!」
「メリークリスマス!!!」
冷えたシャンパンが、喉を落ちていく。
「まあ、良い景色」
窓の下には、ホームに人の溢れかえった池袋駅が、煌々と燈る明かりの波に浮かんでいる。
その先には、ライトアップされたサンシャイン60の一際高いシルエットが、夜空を遮って聳えている。
「俺は肉食系だから、ステーキにする。お前はダイエットか?」
「義兄さんと一緒でいいわ、ダイエットはしてないし、・・・」