その瞳にうつるなら-3
「なんでそこにいるの?」
洗い物を終えた美香が濡れた手をタオルで拭いながら振り返る。
「変なの」と言って笑う美香を、拓巳はそっと引き寄せた。
背の高い拓巳を見上げる美香の大きな瞳に、拓巳は自分の姿がうつるのを確認する。
今はこれで十分だ。
少しでも美香に必要とされているなら、この瞳に自分がうつることができるなら、例えどんな理由でも傍にいたい。
「…今度、絵でも観に行くか」
拓巳の脈絡のない急な誘いに、美香は笑って「そうだね」と返した。