私をイかせなさい-1
絶対にEDから解放してあげる!っと意気込んではみたものの。
具体的にどう攻めるかで私は悩んだ。
そこで、一回目の診察で得た情報を整理してみた。今日は二回目の診察。
1、初めてのエッチで勃たなかった。
2、その後もチャレンジするが成功例なし。
3、でも、自分でなら勃つし出せる。
4、ちゃんとオルガズムを感じる。
5、特に外見上の異常は見当たらない。(異常なほどスゴイというのは除いて)
ここで私は一つの仮説を立てた。
「ね、菅野さん。女性とエッチしようとした時に限って勃たない、ということはありませんか?」
「あ、言われてみれば。ええ、そうです。」
やっぱりか。
「分かりました。そこを解消する方向で治療を進めましょう。」
「はい、よろしくお願いします!」
菅野くんの目に希望の光が宿った。
「もう一つ確認することがあるんですけど。」
「何でしょう?」
「どういう女が好みですか?」
「は?」
「オカズ、って言い方は下品ですけど、あなたの欲情を掻き立てて勃ちやすくする材料を用意したいんですよ。」
「なるほど。」
「どういう女がそういう用途に合いますか?」
「そうですねえ…。」
彼は天井に目を泳がせて考えている。
「知的で…できれば見た目が素敵で、そうだなあ、少し年上がいいですね、包容力のある人がいいから。」
知性。
ルックス。
人格。
難しいなあ、それだけの要素をバランスよく併せ持った人物を見つけるのは。いや、実物をここに連れてくるわけじゃないけどね。画像を探したりするための参考というか。
「有名人だと例えば誰ですか。」
んー、と菅野くんは考え込んでしまった。
「特に…思い当たりません。すみません。」
そう言って彼は私に向かって苦笑いをした。
「そうですか。まあ、ムリに…」
「あっ!」
突然の大きな声に私はマンガのように以下略。
「お、思いつきましたあ?」
「ええ。」
確信に満ちたように頷いてから、彼は答えた。
「美野村諒子先生、あなたが僕の理想の女性です!」
…一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。
「わ?わた、わたわた…私!?」
「はい!知性に溢れ、とっても綺麗で、僕を優しく見守ってくれている。理想通りです!」
「はは、ははは、あはは。それはそれはありがとうございます。私なんかでいいんですか?」
少女か。なに舞い上がってるんだ、諒子。
「あ、でも…。」
「はい?」
「用途を考えると…なんて失礼ことを言ってしまったんでしょう。すみません、先生。」
あ、そうか。あなたをオカズにしたい、って言われてるわけだからなあ、この場合。
「…いいじゃないですか。」
「え?」
「いいじゃないですか、菅野さん。」
「いや、でも…。」
「たまたま使えるオンナが近くに居た、それだけのことですよ。むしろ好都合じゃないですか。」
「そんな…そんなことしていいんですか?」
「そんなことしていいんです。医師として許可します。私をオカズに治療しましょう。」
彼は笑うべきか困るべきか迷ったような顔をしている。
「そうと決まれば。さっそくなんですけどね。」
「あ、はい。」
「どこを目指しましょうね。」
「目指す?」
「菅野さんが自分のEDが解消したと判断する状態ですよ。」
「状態?」
私はタブレット端末に図を描いて説明した。
「細かいステップは置いといて、EDが解消しないと菅野さんが出来ない事には次の3つの段階があります。」
階段の絵を描き、その下に説明文を書き込んだ。
1、女性とエッチする時でも勃つ。
2、挿入できる。
3、女性をイかせられる。
「どうですか?」
「3…です。3を目指したいです。」
「了解。じゃ、最終目標を設定します。」
「はい。」
「私をイかせる。」
「え!あの…。」
「私をイかせる。」
「あ、はい…。」
「私を、イかせる!」
「はい!先生、頑張ります!」
「よろしい。まあ、イかせると言ってもそれはイメージ…」
「イかせます!必ず先生をイかせます!」
…マジか。