距-2
「よく予約できたわね!あそこのクリスマスディナーは半年前予約でしょう?」
ビックリしたそのセリフに俺は笑った。
「だから、女の子はそんな事を気にしなくていい」
「・・・」
「もし、俺と付き合ってくれるなら・・・7時に、来てほしい」
「・・・・」
「閉店まで待ってるよ」
「でも!」
「でも、はナシだ」
「新田くん」
「金曜日まで考えて。俺の事がダメだったら来なくていい。潔く振ってくれ」
そこまで行って、発車のベルが鳴った。
「好きだよ」
最後にそれだけは言いたくて
ベルに負けないように耳元に近づいて言った。
そのすぐ後に新幹線の扉が閉まって
小さな窓越しに見つめ合う。
『好きだよ』
もう一度、口の動きだけでその気持ちを伝える。
新幹線が動き出した。
あっという間に見えなくなった彼女の姿に
「王子を残して城から帰るシンデレラはこんな気持ちかよ」
俺はしばらくデッキに立って夜空を見ていた。