第7章 恩師から愛師へ-1
年明け、交通課に配属された朱音。同じ署員達の目は気になるが処分は受けたのだから堂々としてればいいと田澤にアドバイスされ朱音は出勤し勤務していた。周りから見ると朱音のこれまでの男勝りの姿は消え、どこか控えめで俯き気味の姿勢に反省の色は感じられた。ただまだ腫れ物がそこにあるかのように朱音に積極的に接して来る者はいなかった。
交通課には田澤の大学の後輩、吉川学と言う者がいた。吉川に朱音の面倒を見るように依頼された吉川は少し躊躇いながらも先輩の指示には逆らえずに引き受けた。朱音は吉川について取り締まりなどの業務に同行していた。吉川は気を使ってか朱音の不祥事に関しての会話は全くしなかった。余計な会話は持たないと言った方が早いかもしれない。業務以外の話は殆ど持たなかった。
朱音が、この時に田澤は自分を求めて来るんだなと知ったのは朱音が交通課に配属されてから1週間程過ぎた時だった。吉川は週に3回ほど朱音と2人でパトロールに出かける。パトロールと言っても市内を車で巡回するだけであり、大きなトラブルもまず発生しない。朱音にとっては退屈なドライブに過ぎなかった。その日いつものようにパトロールをしていると吉川が不意に公園の駐車場に入り車を停めた。ふと横を見ると田澤の覆面パトカーが停車しており、中には田澤が乗っている事に気がついた。
「立花、田澤さんがお呼びだ。あっちの車に乗れ。」
「え?あ…、はい…」
朱音は言われるままにパトカーから降りて田澤の覆面パトカーの助手席に乗った。田澤は目で吉川に合図を送ると車をバックさせ走らせた。
「課長…?」
どう言う事なのか意味が分からない朱音は不安そうな目で田澤を見つめていた。
「業務外教育を今からする。」
「業務外教育…?」
「違うな…、フフッ。お前の事を愛してしまった。だから抱きたい。」
「えっ!?」
驚きながらもストレートな言葉に胸をキュンとさせてしまった。何より嫌な相手からの誘いではない。好きな男からの誘いだ。朱音にとっては嬉しくない訳がなかった。
「はい…」
朱音は従う姿勢を見せる。俯きながら頭の中ではクリスマスイヴの熱く燃えた一夜を思い出していた。最高の一夜だった。今でもあの快感が生々しく体に残っている。あと何分後かにまたあの田澤の指先に溺れられると思うと下半身がジュンとしてしまう。
「…」
朱音はハンドルにおかれた田澤の指をジッと見つめてしまった。
車は堂々とラブホテルの中に入り停車した。
「目立つからこれを羽織れ。」
朱音は渡されたコートを羽織り、先に降りた田澤の元へ寄って行った。田澤は何の違和感もなく朱音の肩を抱き寄せホテルの中へと入って言った。部屋は割と高めなお洒落な部屋を選ぶとエレベーターに乗り3階の305号室に入った。勤務中に上司とラブホテルの一室に2人きり…、その状況に朱音は胸をドキドキさせてしまう。