り-6
「どこに行きたい?」
タクシーに乗り込む寸前に、必要以上に白石をじっと見つめて
その視線に白石も視線を合わせた。
「どこにでも―――」
「―――っ」
「って言いたいとこだけど。ごめん。
ここまで来てもまだ心整理はなにもついてないの」
「うん」
気の利いたセリフでも言えればいいのに。
「この前のお店がいいな」
「了解」
一瞬よぎったエロティックな雰囲気は
寒い風にふっと吹き消されて
白石が見つめていた星に消えた。
ココに来てくれただけでいい。
ココに来ないで家で一人で泣いていたかと思うとやりきれない。
その時に俺を選んでくれただけでいい。
今はそれだけでいい・・・