転落-1
「あははっ!」
ポフッ。
「お疲れっすぅ!」
私がうつぶせに寝転んでいる緑のクッションマットにミラもお尻から飛び降りてきた。
「ルリカちゃん最高!かなわないわあ。」
「何をおっしゃいますやら先輩、ご謙遜を。」
ルリカちゃんはベリーショートのウィッグを剥がし、ロングヘアーをなびかせた。
「いやいや。よくもまあ、こんなこと思い付くわね、後輩。」
「あなたの高度な演技力が前提ですわよ、先輩。」
「まあ、そうだけどねー。」
私が飛び降りたビルの淵は、ここから1メートルぐらいの高さしかない。
「ルリカちゃんだって、一人で14役もやったじゃない。さっきの動画に出てきたやつ以外も含めたら。」
「今回出てこなかった場面は別バージョンで使う予定デス。」
ニヤーっと悪い笑顔で見つめ合った。
「どのくらいの再生回数いくかなあ。」
「まあ、ウラでは今世紀最高でしょうなあ。」
「今世紀って…前世紀に動画サイトなんかなかったでしょ、ルリカちゃん。」
「よく知らない。21世紀になったとき、私子供だったから。」
「私もだってば。」
二人ともちょっと懐かしむような目になった。
「もうしてたよ、私。」
「私も。親に見つからないか、ハラハラしながら弄ってたなあ。」
「ベッド?」
「うん。」
「いいなあ、先輩。私、自分の部屋なかったから、トイレとかだよ。」
「私も一人部屋じゃないよ。そのころは弟と一緒。アイツがこっそりしてる横で私もしてた。」
「うわあ、そのシチュエーション、次回の脚本に使えそう。」
「やめてよー、しばらく休ませてよ。体ボロボロだから。」
「本気で痛めつけてたもんね、自分の体。」
「本気でないものは感動を呼ばない。」
「性的興奮も呼ばない。」
「再生回数も呼ばない。」
「お金も呼ばない。」
私はゴロリと仰向けに寝がえり、空を見上げた。イワシ雲が流れていく。私の隣ではルリカちゃんが緑のマットを指でなぞっている。
「…先輩、今日はムリだよね。」
「ごめん、さすがにキツイわ。でも。」
「でも?」
「してるところを見てあげるだけなら。」
「え?そんなの…。」
そう言いながらルリカちゃんはスカートを捲り始めている。
「見えちゃうよ?ここも。まわりのビルから。」
「あ、うん…。」
彼女の指はパンティの横から差し入れられ、中でモゾモゾ動いている。