重ねた手と手-1
「あれ?何してるの?」
「うわ、見られちゃったか。さっき便座の角に太腿の裏側をぶつけちゃったのよ。痣になったらいやだから、確認してたの。」
「そうなんだ。痛かった?」
「うん、けっこう痛かったかも。」
「見てあげようか?」
「…うん、見て…。」
ルリカちゃんの濡れたような瞳が私の右足の太腿の裏側を覗き込んできた。
「ここ…かな。」
指先で撫でられる感触。足の付け根にかなり近い場所だ。
「あ…うん、そうかも。」
「まだ痛い?」
もう一度撫でられた。パンティぎりぎりの、少し色が濃くなり始めているあたり。
「…痛…くは…ない…かな。」
痛くはない。だって本当はぶつけていないのだから。でも、痛み以外の感覚が。
「よかったね。」
「ありがとう。」
ルリカちゃんはまだ私の太腿の裏を覗いている。
「どうしたの?」
「可愛いね。全部出ちゃってるよ、中に入ってるはずなのに。」
…
ばかな。一瞬の行動だったとはいえ、確実にパンティの中に押し込んだはずだ。
「色白だから、静脈が綺麗に浮き出て見えてる。」
「あ、ああ、確かに私って色白よね。でも、静脈が可愛いって、初めて言われたかも。」
「ふふ、私は初めて言ったかも。」
やっぱりこの子、面白い。
「帰ろ。」
「うん。」
外に出た私たちはタクシーに手を上げた。
「ちょっと冷えてきたね。」
「そろそろそんな季節なのね。」
路肩に停まったタクシーの後部ドアが静かに開いた。
ルリカちゃんが奥、私が手前に座った。さっきまでと左右の並びが同じだ。さっきまでと。さっき、私は…。
ドン。
ドアが自動で閉まった。
私は念のために持って来ていた上着を膝に乗せ、その下に手を入れた。
「手が冷えちゃった。」
「私も。」
ルリカちゃんも同じように膝に乗せた上着の下に手を入れた。
急発進気味にタクシーは動き出した。二人の首が後ろへガクンと揺れた。
「真夏はきついけど、あまり寒いのもねえ。」
私は膝に乗せた上着の下でスカートのサイドホックを外し、音がしないよう細心の注意をはらってファスナーを少しだけ開いた。
そうやって作ったお腹とスカートの隙間に上から左手を入れ、パンティを横に捲りながら指を侵入させた。
「そうね。私、寒いのはあまり得意じゃないから、もう少しこのくらいの気候が続いてほしいのだけれど。」
カサカサとした感触を掻き分けていくと、目的の部分に辿り着いた。
トイレの洗面台で中断を余儀なくされたそこはすっかり出来上がっていて、待ちかねたように指に吸い付いてきた。
グジュリ、グジュリ、と指先で捏ね回した。
「そうなんだ。今はどう?寒くない?」
谷間に埋めた。ジュブっと音が出た。でも、私以外には聞こえなかっただろう。
「体は大丈夫なんだけど、手がやっぱり冷たいかな。」
「私は温まってきたんだけど、握ってあげようか?」
「うん、お願い。」
ルリカちゃんの左手が私の膝と上着の間に入ってきた。それを右手で握ってあげた。
「あったかい…。」
彼女の左手のすぐそばで、私の指は敏感な蕾を虐めている。
「ねえ、もっと奥まで入れていい?」
「いいよ。」
ルリカちゃんの左手と私の左手が、スカートの布一枚を挟んで上下に重なった。
「ごめん、くすぐったいよね?こんな所。」
ルリカちゃんが訊いてきた。
「大丈夫だよ?」
「そう?でも、なんだかモゾモゾしてるのを感じる。」
私は指の動きを止めない。
「ごめん、ホントはちょっとくすぐったい。へへ。」
「いいの?」
「いいよ、女同士だし。それに、さっき知り合ったばっかりで言うのもなんだけど、ルリカちゃんなら、私、いいかも。」
「えー、ソッチなの?」
「いやいや、そういう意味じゃ。」
「ふふ。でも、もしそうだとしても、私、いいかな。」
濡れたようなうつろな瞳で見つめられた。
ジュク。
あれ、分泌が増えた。もしかして私、イケるの?ソッチ。
そういえば、温泉でも同じ名前のルリカちゃんとあんなことに…。
「ねえ、今度うちに遊びに来てくれないかしら。」
この流れでその話…。別に…いいけど。
「私の大切なもの、見てほしいから。」
潤いを増した谷間を渡り切った指がズブリと入ってきた。自分の意志じゃない、別の意志に動かされているかのように。
「うん、行く!」
イク…。