第29話 『ペナルティ授業、国語と音楽』-1
絶対服従週間2日目、火曜日。 HR後、全教室を網羅するモニタールーム。 3組を担任する14号は、黒タイツに黒スーツ、グレーのスカートに濃灰色をしたショールという、普段通りの寒々とした装いだ。 視線の先にはCグループ1組の移動教室があった。
火曜1限、国語。 F棟大教室。 畳が敷かれた中、全裸の少女たち――Cグループ2組の生徒達だ――が黒い目隠しをつけ、仰向けに横たわっている。 少女たちのお腹には、黒々とした墨で14、5文字の仮名が記されていた。 畳み全体に隙間なく少女を並べ終えたところで、国語担当の12号教官が口を開く。
「みなさん、注目」
目隠しをしていない生徒達――Cグループ1組生――が一斉に12号教官を向く。
「先週にクラス内歌留多大会をしましたね。 今日は、みなさんの勝利で獲得した『人間歌留多』で、最優秀チーム決定戦を行います。 ハイ、拍手〜」
パチパチパチ……!
割れんばかりの拍手だ。 パチ、パチ、パチ……14号教官も、モニター越しについ拍手を送ってしまう。 勝利に縁がないクラスを担任していると、知らず知らずのうちに卑屈になるのかもしれない。 14号は、少なくとも1組、というよりは12号教官に対する敵愾心は持っていなかった。
「全歌留多から65枚を除いた、35枚で行います。 形式は『源平戦』、自陣の札を先になくした側が勝利ですね。 相手陣の札をとった場合、自陣の札を一枚選んで相手陣に送りましょう。 それぞれの札には、クリトリスにタコ糸が結んであります。 遠慮はいりません。 クリトリスを引っ張ればどんな愚鈍も起きますね。 紐をひっぱって立たせたら、相手陣まで誘導します。 モタモタしてるようなら、構いません、千切れるまで引っ張っておやりなさい。 もしかしたらオマメが抜けるかもしれませんが、グズグズしている方が悪いわけで、気にする必要はありません。 そもそもすっぽ抜けたとして、それはそれで面白い」
ざわざわ、さわさわ。 担任に媚びるように、押し殺した笑いが其処此処で起こる。
「源氏勢は、歌留多の右乳首を叩いて獲得すること。 平氏勢は逆に、左乳首を叩くこと。 とられた札は、叩かれた乳首を大声で宣言して、場から去る。 そのために、札は、先にどちらの乳首を叩かれたか、全身全霊をかけて知覚するんですよ。 コンマ数秒の世界ですから、一瞬の油断が命取りです。 分からないなんて解答は絶対に許しませんし、もし源平が揉めて、ビデオ判定になって札の判断が間違っていたら、即刻追加指導に処しますからね。 肝に銘じておくように」
場に寝そべった少女たちは、みな少しでも感度を揚げるべく、事前に乳首をしごいている。 どの乳首も痛いくらいに尖がっていて、盛りあがった乳輪と相俟って、見事に高々と勃起していた。
「お手付きは1回休み。 空札は飛ばす。 詠み手は国語係にお願いします。 源平ともに、準備は宜しいか」
「「はい」」
事前にクラスで行ったカルタ会で優秀な成績を収めた2人組が、それぞれ源平に分かれて対峙する。
「む――」
「はいっ!」
バシィッ。 最初の一字が読まれた直後、倒れるように1組生が近くで寝転んだ札役2組生の右乳首をはたいた。 一字決まり。 手加減が一切ない、乳首を斬りとばす勢いだ。
「みっ、右ッ……げ、源氏ですッ」
叩かれた少女が大声で叫び、すかさず立ち上がる。 クラスメイトを踏まないように注意して、その上でモタモタしていると思われないよう素早く、少女は場外へと駆けた。 少女のお腹には『きりふくしるけ あいえきあふれ』と大書されていたが、元々は『むらむらと つゆもかわかぬ まんのじは きりふくしるけ あいえきあふれ』という女性器の汁気を詠(うた)った下の句だ。
「ゆら――」
「はいっ!」
反対側の陣地に見つけた札少女に、源氏側の1組生徒が横っ飛びにダイブする。 横たわる少女たちの肉をクッションにして衝撃を和らげ、目の前の右乳房を、
バシィッ。
容赦なく全力で薙ぎ払った。 けれど札役の少女は動かない。 少女のお腹には『ゆみずのごとく こがねふくなり』と大書してあり、詠まれた札に間違いはないのだが……と、何かに気づいた1組生徒が、慌てて二度目の平手を乳房先端、乳首に見舞う。 今度は『源氏ですッ!』、札少女は一声叫んで場を離れた。 つまり、乳房が大きすぎるせいで、横に薙いだ手が乳首に届いておらず、札役少女は乳首を叩くまではカウントしない決まりを守った訳だ。 1組生徒は隣にいた札少女のクリトリスを乱暴に引っ張り、尻を蹴とばして相手陣に送り込む。 足元に他の少女がいないことを察知した移動札は、すぐさま仰向けに寝そべると、両手を脇につけて『気をつけ』の姿勢。 これで源氏側が2枚リードしたことになる。
「もろみえで ああくさとおもえ やりまくら はなにてかぐに しめしまつらん」
露出した股間の禍々しさを詠んだ句。
「しばられど いきていきけり わがはだは ものすきずきと ひしがたになく」
緊縛してもらう幸せに浸る自身を詠んだ句。
「おなりやみ いくののみちの とじならで まだいきもせず あまのあなぐら」
自慰における絶頂寸止めの膣を詠んだ句。 3枚連続で空札が続くも、場の空気は弛緩しない。 こうして空札と場札がほぼ交互に現れて、1試合約15分で源氏が勝利した。 1限が終わるまでに計3局催され、全試合で源氏が勝利を収めたのだった。