投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

「そば屋でカレーはアリですか?」の最初へ 「そば屋でカレーはアリですか?」 29 「そば屋でカレーはアリですか?」 31 「そば屋でカレーはアリですか?」の最後へ

08.氷解-5

「ユカリ先輩、嶺士のカウンセリングの代金は……」亜弓が傍らに置いていたバッグを手に取った。
「嶺士からもうもらったからいいの」
「ちょっと待て」嶺士が眉間に皺を寄せた。「何だよ、カウンセリングって」
 亜弓は嶺士に目を向けた。「ユカリ先輩、臨床心理士だよ。知らなかったの? 嶺士」
 嶺士は腰を浮かせてユカリを指さし、大声で言った。「ええーっ? おまえが? そのがさつな性格でか?」
「またひっぱたいてやろうか?」
 マユミが言った。「今は総合病院で働いてるんでしょ? ユカリ」
「そ。もう5年になるかな」ユカリは肩をすくめてカップをソーサーに戻した。「だれもが嫌がる未成年担当。毎日一癖も二癖もあるガキどもとバトルを繰り広げてるわ」
「知らなかった……」
「だから今回の嶺士のケースなんて得意中の得意」
 嶺士はユカリを睨み付けた。「ガキ扱いかよ……」
「昨夜はあんた、ほとんど未成年のガキんちょだったじゃない。あははは!」ユカリは高らかに笑った。
 嶺士はひどく恥じ入って黙り込んだ。
「カウンセリング料はベッドで嶺士にたっぷりいただいたわ」ユカリはウィンクした。嶺士はますます身を縮め、顔中に冷や汗を掻いてちらちらと亜弓に目を向けた。
 亜弓はにこにこ笑いながら嶺士の太ももをぎゅっとつねった後、すぐに優しく手のひらでさすった。

「嶺士君、今回のこと、ケン兄とミカ姉さんにはいつ話すの?」マユミが訊いた。
 嶺士は額の汗をハンカチで拭いながら言った。
「今日訪ねることにしてる。スクールが終わって、四人で一緒に食事することになってる」
「そう」マユミはにっこり笑った。
「ケンジさんやミカさんにもいっぱい心配かけちゃったからね」亜弓が申し訳なさそうに言った。

 嶺士が亜弓の前に置かれたアイスココアのグラスを見て言った。
「ところで亜弓、おまえ今日はコーヒー飲まないのか? ここのコーヒー、おまえ大好きだろ?」
「今日はちょっと朝から吐き気がして、刺激物は避けようと思って」
 嶺士の顔が曇った。「吐き気? ま、まさか薬が効かないで妊娠したんじゃないだろうな?」
「バーカ」ユカリが言った。「妊娠したとしても悪阻が来るのはまだずっと後よ。ほんとに物知らずね、嶺士。別れて正解だったわ」
「容赦ない言い方」マユミが笑った。
「じゃ、じゃあ何なんだよ、亜弓」
「アフターピルの副作用だと思うよ。ちょっと長引いてる……」
「ノルレボの? ゴミ箱に捨ててあった?」
「あら、嶺士君よく知ってるじゃない」マユミが驚いたように言った。
「ゴミ箱、見たんだ」亜弓が嬉しそうに言った。「わざとわかるように捨ててたしね」
「なんだ、あれもおまえの策略かよ」
 嶺士は面白くなさそうに言った。
「智志とあんなことすることを想定して買ってたのか?」
「何言ってるの」亜弓は嶺士を睨んだ。「嶺士が盛り上がって訳わからなくなって直接中に出した時のために買い置きしてたの」
「やっぱりね。あたしの思った通り」ユカリが言ってコーヒーを口に運んだ。
 嶺士はばつが悪そうに頬をぽりぽりと掻いた。
「市立病院の和代先輩の勧めで処方してもらったの」
「海山和代に?」

 海山(みやま)和代というのは、マユミや亜弓と同じ水泳部のマネージャだった。亜弓が一年生の時に和代は二年生。ちっとも黙っていないおしゃべりでがさがさしたその性格から、部員にはのべつ鬱陶しがられていたが、成績優秀で頭が切れ、高卒後は医大に進み、今はユカリの勤務先と同じ市立総合病院の産婦人科で医師として働いている。

「近いうちにまた診てもらうつもり。薬がちゃんと効いているかどうか。この胃のむかむかも気になるし」
「それがいいな」嶺士は残っていたカップのコーヒーを飲み干した。
 ユカリが言った。「あたし明日仕事だから、朝からついでに言っといてやるわ、和代に」
「そうか。助かるよ」



「そば屋でカレーはアリですか?」の最初へ 「そば屋でカレーはアリですか?」 29 「そば屋でカレーはアリですか?」 31 「そば屋でカレーはアリですか?」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前