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「そば屋でカレーはアリですか?」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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08.氷解-4

「俺がそのターゲットになるなんて思いもしなかったけど、よくよく考えたら、人の好みっていろいろだし、好きになる相手が異性とは限らないよなあ、って思い始めたんだよ。さっき亜弓が言ってた通り」
「智志もほんとは直接あんたに想いを伝えたかったんでしょうね」ユカリがしみじみと言った。
「でも、肉体的な欲求が高まりすぎて、結局それができなかった」マユミが言って空になった嶺士のカップにデキャンタからコーヒーを注ぎ足した。
「あたしにいろいろ話して聞かせてくれた後、智志君、なんかとっても解き放たれた感じだった。嶺士も今まで通り智志君の親友でいてあげてね」亜弓が言った。
 嶺士は何度も頷いた。
「あいつが俺に友情以上の気持ちを持ってるってこと、いつか告白してきても、俺はそれを受け入れられそうな気がする」そして嶺士は慌てて付け加えた。「あ、受け入れるって、そっちの意味じゃないからな」
「わかってるよ」亜弓は笑った。「でも今一瞬、あたしあなたと智志君がハダカで絡み合ってるのを思い描いちゃった」
「いいね!」ユカリが身を乗り出した。「二人ともガタイいいし、画になる画になる!」
「ウケはどっちかな」マユミも目を輝かせた。
「嶺士がウケの方がおもしろそうですよね」亜弓も言った。
「おい!」嶺士が頬を赤く染めて会話を遮った。「いいかげんにしろ、おまえらっ」
「それにしても」ユカリが嶺士を指さして言った。「嶺士、あんた気づいてなかったの? 智志の熱い想いに」
「全然」
「そぶりとか視線とか、気づくポイントは少なくなかったんじゃない?」マユミが言った。
「こないだ家に来た時も結構秋波を送ってたよ、智志君。あたし何度も気づいたもん」亜弓が言った。「だから焦ったんじゃない、あたし」
「そ、そうなのか?」
「だんだん病的になっていってた感じ。客間で二人きりになった時に気づくでしょ、普通」
「そうか、二人きりになって俺を襲うつもりだったんだろうな、あいつ。危うくパンツ脱がされるとこだった」
「亜弓が身を挺して守ってくれたんだよ、あ・ん・た・を」ユカリが鋭く人差し指で嶺士を指さした。
「嶺士が智志君とカラダの関係になるのも嫌だったけど、そのことであなたたちの親友の関係が壊れるのはもっと嫌だった。でなきゃあたし、あんな決断しなかったと思う」
 嶺士は亜弓の手を取った。
「ごめんな、亜弓、辛い思いをさせて」
「ううん、嶺士とは比べものにならないけど、それなりに気持ち良かったから……」亜弓は小さな声で言った。
「亜弓ちゃんたら」マユミが上目遣いで困ったように言った。
「亜弓、しばらく嶺士に抱いてもらってなかったらしいからな」ユカリが嶺士を軽く睨んで言った。
 亜弓は慌てて言った。「あ、あなたのせいじゃないんだよ、嶺士。あたしがインランだっただけ……」
 嶺士は何も言わず亜弓の肩に手を置き抱き寄せた。
「ユカリも大変だったね、酔った嶺士君の相手して」
「いや、あたしも気持ち良かったから」
 亜弓もマユミもユカリも笑った。嶺士は肩をすぼめて頭を掻いた。
「あっ!」
 いきなり叫んだ嶺士の声にユカリは顔を上げた。「何? どうしたの、嶺士」
「ユカリ、おまえ昨夜言ってたよな、彼氏がいるって。なのに俺とあんなことしてもよかったのかよ!」
「今さら何言ってるの。それにあたしが彼氏持ちだって言った途端、あんた目の色が変わったじゃない」
「そ……」
「あれはあんたにあたしを抱かせるためのトリガーだったのよ」
「オスの闘争本能を引き出した、ってわけね」マユミが言った。
「そう。他のオスからメスを奪ってやるっていう野性の本能をね」
「そ、それはともかく、やばいんじゃないか? 俺、どうしたらいい? ユカリ」
 ユカリは呆れ顔をして言った。
「嘘ついたってこと、話の流れからわかるでしょ?」
「嘘?」
「そうよ。ほんっとに鈍い男。ちっとも変わってない」
 ユカリは軽蔑したように言った。
「つき合いたいっていう人はいるけどね。まだ恋人未満だから安心して」
「そうか……悪かった、ユカリ」
 嶺士ははあ、とため息をついた。


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