た-1
「すっぽかされたって・・・」
それ以上聞いていいものか迷っていると
「いつもは駅近くの喫茶店で待ち合わせるんだけど
待ち合わせの時間から3時間しても来なかったから。
・・・諦めたの」
3時間。
今の俺にはそんな長時間待ってくれるような女はいない。
「仕事が・・・仕事が終わらないのかもしれないじゃない、か」
見たこともない男の肩を持って
そいつのできなかった言い訳が口から出た。
白石は寂しそうに笑った。
「社内のやつか?」
彼女を3時間も待たせるなんて・・・
俺なら待たせない。
白石は俺の問いに、小さく首を振る。
「相手の会社に電話したのか?」
「彼は営業だから。どっちにしろ会社にはいないと思うの」
「そっか、連絡手段はないもんな」
「でも、これは初めてじゃないから」
すっぽかされることが初めてじゃないのに
また待つって・・・
よっぽどその男が好きなんだろう。
「諦めて帰る時に、雅子に会って。ココに連れて来てもらったのよ。
憂さ払いするぞーって。花金だから」
そう言ってくすくす笑う。
あぁ、山岡か。何度かここで会ったな。
「そっか。1人で帰るのか?ベイサイドは楽しくなかった?」
「ビックリした」
だろうな。