た-2
「まだ時間も早いし、どっかいくか?」
10時になろうとするその時間は
普段の終電ギリギリの俺からすればまだ早い時間だった。
そんな俺の言葉に
「そうね」
なんて綺麗に笑う。
適度な残業の一般職の女の子にとって10時が早いのか遅いのか知らない。
ここ数年、大事な女なんか作らずに仕事に没頭してきた。
それは加賀も同じで、仕事はすればするほど楽しくて
真剣な付き合いの女なんか作る暇もなかった。
作る気もなかった。
大切にしてやれないと分かっているからだ。
だから加賀も今日みたいな所や飲み屋で女の子をひっかける。
その日だけ、時間のある日だけ大事にすればいい女の子を見つけるために。
「どんなところがいい?」
「静かなところ」
今までの騒がしさを思い出して俺は可笑しくなった。
「了解」
俺の顔を見て白石も笑った。
「運転手さん、元町に回ってください」