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『まほうのパティシエ ピュア☆ドルチェ』〜せいなるよるの おとどけもの〜
【ファンタジー 官能小説】

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とどけ!おいしいケーキ-7

と、ひたいの汗をぬぐいながら、道ばたに置いておいたケーキの箱をふりかえったときです。

『ダーティ・デコ!!』

そんな叫び声がとつぜん、声高らかに雪模様の空を振るわせました。

『……チェーンジ・エクスタシーフォーム、デッコレーショーンッ!!!』
その声に返事をするように、上空の黒い雪雲たちがうずをまいて、はげしいカミナリをとどろかせました。

「えっ!?」
思わず声に振り向いたあたしの頭上で、黒い炎のようなエナジーのオーラを身にまとった人影が、あたしを見下ろしていました。

小さな銀の王冠がワンポイントの、真っ黒なカチューシャ。

うらやましい、ていうかママにも負けないくらいくらい豊かな胸の谷間を見せつけつつ、メリハリのあるボディラインにピッタリと張りついた黒いドレス。

縦にならんだボタンは、漆黒のブラックベリー。

スラッと伸びた素足の先を包む、黒光りするハイヒール。

そして、白い……いいえ、銀色にうねる豊かな髪。

この女の人、いったい誰!?

戸惑うあたしを無視して、黒くまとうオーラをまるで翼のように大きく羽ばたかせ、彼女はふわりと着地すると、

『・・・兵隊アリ3人衆ともあろうものが、負けてしまうとは、なにごとだ』

『……じょ、女王……さ……』
プチ。

雪の積もった歩道のわきで、奇跡的にまだ息のあるアリさんの頭が、黒エナメルヒールのつま先に、本当のアリのようにつぶされてしまいました。

「あ、あなた、なにものなの!?」

『………わらわを覚えておらぬのか?』
そう言って、女はようやくあたしを振り返って、
『まあ、仕方があるまい』
とつぶやいてから、

『わらわの名は、魔王のパティシエ、クイーン・アントラー・・・我がアントラーズ王国の、女王である!!』
声高らかに名乗りを上げて、右手に握りしめた黒いステッキを構えると、

『最期のデザートは、アナタで決まり♪』
と言いざま、
チュッ♪
と、キスを投げてきました。

「あ、アナタが・・・アリさんたちに命令して、この街のケーキを……」

『さよう』
雪のように青白い顔のなかで唯一、真っ赤なくちびるが、なまめかしく動きます。
『なぜなら……ピュアドルチェ、いや佐藤イチゴ・・・お前とこうして、まみえるために』

「な、何で、みんなの大事なクリスマスケーキを奪おうとするの!?・・・って言うか、何であたしの名前を知ってるんですか!?」

『それは、あとでたっぷり教えてあげる……だが』
女王アントラーは、妖しい笑みを浮かべて、
『だがまずは、お前をたっぷり味わってからだ!!』
右手に持っていた黒いステッキを振り上げました。

『ディヴァインショット!!』
拳銃みたいに構えたステッキの先から、雪玉サイズの真っ黒な弾丸が連射され、あたしをめがけて降り注ぎます。

「ああッ!?」
戦い続けてヘトヘトなところに不意をつかれ、避けるまもなく弾丸は、あたしの両手足に命中しました。
「くぅっ、こ、これは!?」
両手首と両足首に命中した弾丸は、飛んできたいきおいのままあたしを背後のブロック塀に叩きつけ、強力な接着剤のようにブロック塀にへばりついてしまいました。

「は、はずれない!?」
ブロックにへばりついた粘着弾は、みるみるうちに頑丈そうな鉄のリングにへんかしました。
一瞬のうちに、あたしはブロック塀に「大」の字にハリツケにされてしまったのです。

『完全敗北、召し上がれ♪』
ステッキの先端からたちのぼる煙をフッと吹き消しながら、女王はゆっくりと近づいてきます。

「そ、そのチカラは……あたしと同じ、魔法のデコペンの……」

『そう』
微笑みながら、身動きのとれなくなったあたしの顔をのぞきこんで、
『デコペンをあやつれるのは、お前たちだけではない……しかもわらわのは、お前のソレとは比べ物にならぬ・・・パワーも、経験も』
そう言って女王アントラーは、身動きのとれないくやしさをかみしめたあたしのくちびるに、ソッと赤い唇を重ねてきました。

「う、ムッ!?」

突然ファーストキスを奪われた驚きで硬直したあたしのくちびるを割って、ハチミツのような甘い香りの唾液に濡れた女王の舌が、口のなかにしのびこんで来ました。

ビックリして目を見ひらくあたしの前歯のすき間をこじ開けて、女王とはまるで別の生き物のような生々しい舌が、するりとあたしの舌にからみついてきます。

「んッ、ふぅッ」
顔をそらして逃げたくても、うまく身動きがとれません。
ふさがれたくちびるから、苦しげな息を吐き出すのがせいいっぱいです。


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