とどけ!おいしいケーキ-6
なんとかしたいけど、でも、どうしたら?
キックしてやりたくても、両足は捕まえられてるし。
たとえなんとか3匹の舌から逃れられたとしても、残り少ないエナジーも気にかかる。
何より、頼みの綱のはずのデコペンは、逆に敵に利用されて、おしりの後ろであたしの手両手首をしばってる。
せめて、デコペンが使えるなら。
そうしたら、反撃のチャンスがあるはずなんだけど。
デコペンさえ操ることができれば・・・
ん?
待てよ?
・
・・
・・・
あ、な〜んだ。
・・・そうか、この手があったわ!!
よぉ〜し。
見てらっしゃい。あたしを舐め回したことを後悔させてやるんだから!!
「マジカル・デコ!!」
両手を縛っているデコペンに向かって祈るように、あたし、叫んでみました。
「……チェンジ・ピュアフォーム、デコレーション!!」
『なんだ!?』
『頭がおかしくなったのか、コムスメ!?』
あたしの声にビックリしたアリさんたち、舌の動きを止めてしまった。
でも、手を縛ってるムチに変化したデコペンのほうも、残念ながら沈黙したままです。
いつもみたいに手に持ってるわけじゃないけど。
でも、手を縛っているってことは、身に付
けてるのとかわりないんだから。
きっと届くはず。
いや、届いて。
『なんだなんだ・・・何かする振りをして、ハッタリか!?』
『ムダムダ、そんな手に引っかかるものか』
『無駄なことを・・・さあ、気を取り直して、舌の動きでジェットコースターアタックを仕掛けようじゃないか!!』
『『おうっ!!!』』
いやぁ〜〜ん。
最悪の結末!!
と、あきらめかけた時です。
あたしの全身を、手を縛ったデコペンの先からあふれだした輝きが、甘いイチゴの香りと共にふたたび降り注ぎました。
フワッとした感触の、ホイップクリームみたいな輝きは、噴水のようにはじけながら、ほとんど溶かされたガーリーサンタのコスチュームをおおって、新たな形を整えてゆきます。
かわいいイチゴがワンポイントの、クリームでふちどられたカチューシャ。
胸元を包む、マシュマロみたいにモコモコの白い制服。
縦にならんだボタンは、ツヤツヤしたイチゴ。
大きなホールケーキみたいに、バラのかたちのクリームで飾られた、短いスカート。
スラッと伸びた素足の先を包む、白いブーツ。
スカートのすそからチラチラ見える、生クリームでデコったかわいいアンスコ。
『コムスメ、何をした!?』
『ま、まだそんな力があったのか!?』
あっというまに姿を変えたあたしにおどろいて、思わず飛びのいて距離をとった3匹のアリさんたちに向かって、あたし、
「まほうのパティシエ、ピュア・ドルチェ!!」
と、声高らかに名乗りを上げて、手首を縛ったデコペンを引きちぎりながら構えると、
「お〜いしく、召っし上っがれ〜♪」
と、本日2度目の決めゼリフを叫びながら、ウインクをお見舞いしてやりました。
良かった。
まだどうにか、変身できるだけのエナジーが残っていたんだわ。
とにかく、エナジーの残ってるうちに、いっきに反撃しなくっちゃ。
さあ、エッチなアリさんたち。
かくごしなさい。
手のなかに戻ったデコペンはかなりしぼんでるし、お腹もペコペコだけど。
「ピュアドルチェ、本日のラストオーダー!!」
最後の力を振りしぼってあたし、叫びました。
「ピュアベリー・フィールズ・フォー・エバー!!!」
全身全霊で叫んだあたしを中心に、ピンク色の大爆発がひろがります!!
『『『ぼわわわわぁぁあああ〜〜ん』』』
わるものだけをこらしめる、究極のエナジーの奔流に押し流され、さすがのアリさんたちも、逃げるまもなくうれし泣きにむせびながら、爆発に飲み込まれていきます。
苦労したけど、やっとアリさんたちをやっつけられたんだわ。
ちからを使いきって、あたしも、手の中の魔法のデコペンも、もうクタクタ。
エナジーのバリアーが無ければ、ただのホイップクリームやイチゴでしかないピュアドルチェのコスチュームが、あたしの体温で溶けだしちゃう前に、お届け物のケーキをちゃんとお客さまに持っていこう。
終わったらさっさと帰って、お昼ご飯食べなきゃ、ね?