とうじょう!まほうのパティシエ-3
あたしは叫びながら立ち上がると、制服の胸ポケットから小さなものを取り出しました。
手のなかで桃色の光を放つそれは、ケーキやクッキーに文字や絵を描くためのデコレーションペンです。
『アリアリ?何をする気だ!?』
『そんなもので何ができるんだ!?』
一瞬ひるんだアリたちでしたが、あたしの手の中の物を見て拍子抜けしたのか、バカにしたように笑いだします。
見てらっしゃい。あたしを笑ったことを後悔させてやるんだから!!
「マジカル・装飾(デコ)!!」
デコペンを空に向けて振りかざすと、桃色の光が爆発したようにはじけました。
「……チェンジ・ピュアフォーム、デコレーション!!」
デコペンの輝きに包まれながら、あたしは思いっきり叫んだのです。
『なんだ!?』
『何をした、コムスメ!?』
とまどうアリの化物たちをしり目に、あたしの全身を、デコペンの先からあふれだした純白の輝きが、甘いイチゴの香りと共に降り注ぎます。
フワッとした感触の、ホイップクリームみたいな輝きは、噴水のようにはじけながら、
あたしの頭。
制服。
スカート。
お仕事用のスニーカー。
そのすべてを優しくふんわり包んで、モコモコと形を変えてゆきます。
かわいいイチゴがワンポイントの、クリームでふちどられたカチューシャ。
胸元を包む、マシュマロみたいにモコモコの白い制服。
縦にならんだボタンは、ツヤツヤしたイチゴ。
大きなホールケーキみたいに、バラのかたちのクリームで飾られた、短いスカート。
スラッと伸びた素足の先を包む、白いブーツ。
スカートのすそからチラチラ見える、生クリームでデコったかわいいアンスコ。
『むむっ、何をした!?』
『き、貴様、なにものだ!?』
あっというまに姿を変えたあたしにおどろくアリさんたちに向かって、
「まほうのパティシエ、ピュア・ドルチェ!!」
声高らかに名乗りを上げて、デコペンを構えると、
「お〜いしく、召っし上っがれ〜♪」
と言いざま、
パッチン♪
と、ウインクをお見舞いしてやりました。