ふ-6
同期の白石とこんな場所で会うとは思わなかった。
「新田くん?」
同期と言っても何千人といる。
横のつながりなんて同じ部に入るか、同じ仕事をしない限りほぼない。
白石の事は、同じ本社勤務で名前はかろうじて知っていたが
挨拶程度の仲だ。
でも・・・
派手じゃない白石と、まさかベイサイドで会うとは思わなかった。
お互いにビックリしている時に俺が呼んでもらったタクシーが来て
「新田くん、乗る?」
なんて聞く。
「白石、ココ初めて?」
マルボロをもみ消して笑いながらそういえば
ココに白石が初めてだった事に少しほっとする俺がいて。
「な、なんで分かるの?」
「ココね、普段はタクシーが通らない場所なんだよ」
「う、うん」
「だから、タクシーに乗りたいヤツはフロントで呼んでもらうんだ」
「え・・・」
「これは俺が呼んだ車。乗れよ。送る」
白石は、あぁそうなのね。と言いながら
俺に促されてタクシーに乗り込んだ。