ふ-5
確かに。男はほとんどが濃紺のダブルのスーツに髪を固めていた。
「近頃は大学生もスーツ着てるからな」
「ふぅん・・・大学生がスーツねぇ」
週に1度はここに通って、少し飽きてきたか?
同じような音楽に
同じような女の子。
同じような時間の流れに、少し飽きてきた。
それでも、毎週女の子をナンパして
名刺を配りまくる加賀はある意味すごいと思う。
「お前、あんまり会社の名刺配るなよ?」
それでも、良いと思った女の子と連絡を付けるには
家の電話か、会社に電話をもらうしかなくて
手っ取り早い会社の名刺を渡すことが多い。
1時間も男同士で話していれば、加賀はやっと好みの女の子を見つけたようで
「俺、抜けるから。じゃ、新田またな」
と手を振って俺から離れて行った。
「よくやるよ」
俺はそう笑いながらつぶやいて、そろそろ帰るか。と
フロントにタクシーを呼んでもらう。
タクシーを待っている間、ぼんやりマルボロを吸っていたら
女の子が中から飛び出してきてぶつかりそうになる。
「え?白石?」