第26話 『閉会式』-2
「さて……思ったより早かったな」
南原はチラリと太陽を見る。 角度、影、日付、西暦、その他を勘案すると現在時刻は16時04分30秒から誤差15秒の範囲だ。 南原は、自分の予定と官庁の予定、すべて頭の中に分単位で記憶している。 今から官庁支部に戻ったとして、17時前にはつく。 今日中に『第二学園』のレポートを仕上げても、南原にとっての定時である24時まで、時間は有り余っている。 事務作業に1時間かけたとして、自由になるのは5時間もある。
「起案、企画……何でもできそうだ。 行事ごとに学園同士のカリキュラムを共有するシステムでも組みますか……」
流れる車窓を眺めながらひとりごちる。 既に気持ちを切り替えた南原にとって、学園の体育祭は『レポートする対象』でしかないのだった。
……。
閉会式を終え、来賓――特に官庁からきた殿方――が帰校したのを見計らい、各学年主任が指揮台に登る。
「グラウンドに持ち出した椅子は、特に足が砂埃で汚れています。 個人割り当ての洗浄液で膣洗いし、肛門で拭いてから教室に持ち込みなさい」
「自分たちについた埃は、クラスで協力して舐めとること。 一粒たりとも教室に持ち込むことは認めません。 股座からつむじまで、身だしなみは念入りに」
「備品を担当した学級委員は、生徒会の指示に従って整頓すること」
「残りの生徒はテントを撤収します。 膣結びした紐は、唾液をまぶせば緩みます。 自分達の恥ずかしい膣汁を味わいながら、舌でもって解(ほど)きなさい」
「自分の割り当てが終わった生徒から、教室で待機です。 全員が教室に戻るまで解散してはいけません」
教員たちの連絡事項を、肩幅に股を開き、胸と股間を張った第1姿勢で静聴する生徒達。 一日中、テントの中とはいえ屋外で過ごした生徒たちからは、疲労が色濃く漂っていた。 肌が真っ赤に腫れた生徒もおり、残暑がもたらす日焼けは馬鹿にできない。 照りつける太陽は、間接的に浴び続けたとしても、体力を根こそぎ奪ってゆく。
「来週一週間を限り、運動部、文化部、愛好会の別を問わず、優勝した1組生徒は、Cグループ2・3組生徒全員を備品として扱うこと。 A・Bグループの2・3組生は、合同授業時に1組生徒に仕えること。 細部は授業担当の教員、および顧問から指示を受けなさい」
「来週の日曜は、B・Cグループの2・3組生は、寮監に割り当てられた1組生徒に仕えること。 この日に限って校内施設を解放します。 1組生徒は、この機会に様々な用具に積極的に触れましょう。 器具の使用にも原則的に制限は設けませんが、ただし、不可逆な傷を備品につけることのないよう、一定の配慮は求めますよ。 どのような行為が認められるかは、このあとHRで担任から指導があります。 学園生徒として一層精進に励みましょう」
「2・3組生徒は、この機会を『新しい持ち主に仕える練習』と捉え、前向きに仕えなさい。 深く考える必要はありません。 研修で培った『絶対服従』の姿勢を存分に発揮し、どんな困難な課題であっても成し遂げるように。 来週一杯の『服従期間』に『不服従』があった生徒には特別指導があることだけは、事前に連絡しておきます」
諸連絡を聞く生徒のうち、2、3組生徒の肩が落ち、視線が淀んでゆく。 特にBグループ生の落ち込み様は明らかだ。 同期に対する『服従期間』を体験した生徒たちは、なまじ強権を普段から行使する教員よりも、一時的な権力を持った同期の方が恐ろしいことを、膣の奥まで身に染みていた。
「諸連絡は以上です。 各自、割り当てられた仕事にかかりなさい」
各クラスに担任が赴き、生徒を連れてグラウンド各地へ散ってゆく。 テントを外し、椅子を片付け、グラウンドを整地しなおし、教室で体育祭を総括し……ここから先は担任の仕事だ。
時刻は5時半。 秋晴れ、雲一つない空の片隅で、太陽はまだまだ沈む気配を見せなかった。