後ろの正面-6
放課後といえども、学校にはまだ生徒や教職員が残っている。そんな彼らの目を盗み、一人の女子生徒が自慰行為を撮影されていることなど、おそらく誰も知らないだろう。
「あん、ん、ん、あっ……」
恥じらいながらも遥香は玩具をバイブに持ち替え、そのいかがわしい竿を自らの穴に導いていく。太さが二十五ミリほどもあるはずなのに、ちょっと動かすだけでバイブは遥香の言うことを聞いてくれる。
値段はいくらくらいするのだろう、などと関係ないことを心配しながら遥香は膣をぐちゃぐちゃにした。白濁した汁が止め処なく溢れる。遥香はすっかり自慰行為に取り憑かれてしまった。
「バイブオナニーに溺れた美少女、麻生遥香。君のありのままの姿は僕によって管理され、永久に保存されるのだよ」
櫻井の心無い台詞が室内に響く。
櫻井先生、あなたはほんとうに残念な人です──遥香は心の中でつぶやいた。十代の女の子の体をもてあそび、その未来まで奪おうとするなんて、いつかかならず罰が下されるから覚悟しておいてください、と警告してやりたかった。
それから三度ほどのオルガスムスを味わい、愛液を拭ったティッシュもそろそろ散らかってきたので、遥香は気怠い体を起こして視線を上げた。携帯電話をかまえた櫻井の肩越しに、閉め切られたカーテンが見える。窓の外は中庭になっているはずだった。
夕暮れの近い今の時間、この部屋に直射日光が届くことはない。
「先生、もう帰らせてください……」
バイブ遊びをしながら遥香が股を開いているところに、こんこん、と窓ガラスを叩く音が聞こえた。
遥香は体を硬直させ、両脚をぴったり閉じた。こんな人気(ひとけ)のない場所に、一体誰だろう。
「先生?」
遥香が助けを求めると、櫻井は愉快そうに肩を揺すり、窓のほうを振り返ってこうつぶやいた。
「彼が来たようだ」
さらに窓のそばまで近付き、示し合わせたようにカーテンをちらりと開けてしまう。
遥香はあわてて物陰に身を潜めたが、窓の外に人が立っているのがそこからでも見えた。
向こうも遥香の存在に気付いたようで、日焼けした顔にいやらしい笑みまで浮かべている。
「やだ、どうして……」
そこまで言って遥香は絶句した。なぜなら、そこに立っていたのが遥香のよく知る人物だったからだ。