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濡レ羽色ノオ下ゲ髪
【ロリ 官能小説】

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連鎖-1




「ねえ、今年はどこの海にしよっか?」
 友人の一人がポテトフライを片手に話題を挙げた。
「あたし、遊園地のプールがいいな」
 別の友人がテーブルに頬杖をついて胸をときめかせる。
「遥香はどっちがいいの?」
「うーん、どうしよう……」
 友人二人の視線を受けながら、遥香は曖昧な返事をした。
 駅にほど近いハンバーガーショップで、彼女たちは夏休みの計画を立てているところだった。もちろん部活や試験勉強が優先されるので、その合間を縫った予定を組まなければならない。
 海水浴、花火大会、フェスと呼ばれる夏祭りなど、夏休み中は注目すべきイベントが目白押しだ。
 遥香としては充実した夏休みを送りたいと思っている。けれどもそれを叶えるには『彼ら』の許可を得なければならない。
 一気に熱が冷めてしまった遥香は、頭の中に大きな水槽を思い浮かべた。生きた化石、シーラカンスが水槽の底でゆらゆらと鰭(ひれ)を動かしている。しかしそれは古代魚ではなく、女子生徒たちを追いかけまわす櫻井教諭の仮の姿だった。
 彼は遥香のことを水中に引きずり込むと、肥大した生殖器を使ってせっせと交尾を始める。新鮮な卵子を求めてひたすら雌を犯し続けるのだ。
 逃げ場のない淀んだ水槽の中で、いつか私は食べられてしまうんだ──そういう悲観的な妄想をしながら遥香はハンバーガーをかじり、一か月後、いや一週間後の未来も思い描けないことにがっかりした。
 以前なら何事にも前向きに取り組んでいたし、誰よりも健全な心を持っていた。それなのに、櫻井に乱暴されたおかげで遥香の人生は狂ってしまった。
 ほんの些細なことで急に悲しくなったり、おかしな幻覚に悩まされる日も少なくない。
「あれ? メールだ」
 携帯電話をいじっていた遥香が声をあげると、後の二人もそれぞれの携帯電話を凝視して食事の手を止める。
「やだあ、気持ち悪い……」
 友人の一人が半笑いの顔で言った。不審者情報を知らせる内容のメールだった。メールは学校関係者の元へ一斉に配信されることになっている。
 どうやら目撃情報だけのようだが、性犯罪のおそろしいところは、連れ去りや強姦の事実があったにもかかわらず、被害者自身が泣き寝入りしてしまうケースが非常に多いということだ。
 さらに言えば、近親者から虐待を受けた場合、家族関係の破綻や地域社会からの孤立を怖れるあまり、被害者は沈黙せざるをえなくなる。
 つまり遥香の場合、父親の言動にも注意を払う必要があった。彼は中学生になった娘のことを、どのような対象として見ているのだろう。まさか櫻井と同様に、あわよくば性欲の捌け口にしたいと思っているのだろうか。
「ねえ遥香、ちゃんと聞いてる?」
「あ、うんうん。新しい水着を買いに行くんだよね?」
「そうじゃなくて、花火大会の時はみんなで浴衣を着ようねって言ったの」
「そうだっけ?」
「ほらやっぱり、人の話聞いてないじゃん」
「ごめん……」
 すっかり味のしなくなったハンバーガーを口にはこびながら、遥香は友人たちの前で愛想笑いを振り撒いた。こんなことがいつまで通用するだろう。ストローを吸うと炭酸の泡がちりちりと喉を刺激した。


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