後ろの正面-5
一通りの行為が終わると、先にズボンを穿いた櫻井は変わり果てた姿の遥香を見下ろし、こう言った。
「持ち物検査をしてあげるから、手提げ鞄の中身を出しなさい」
遥香は頭痛を堪えるようにしながら体を起こし、股間から精液を垂らしたまま手提げ鞄を引き寄せた。
鞄から取り出した中身を膝の上に置き、上目遣いで社会科教師の顔色をうかがう。
「ちゃんと使ってくれているだろうね?」
櫻井が訊くと、遥香はこっくりとうなずいた。そして膝の上に乗せたバイブとローターに視線を落とす。
女性が気持ちよくなるための玩具、という説明付きで櫻井から渡されていたのだが、それらを所持品として持ち歩くことへの不安からか、遥香はたびたび挙動不審になっていた。
家に居ても、学校に居ても、外出する時でさえ玩具の携帯を義務付けられているのだから無理もない。
最初の頃は使い方がよくわからず、体の色んな部分に試したりして徐々に慣れていった。
そうして繰り返し使っているうちに、遥香一人でもどうにか操れるようになり、今では玩具に対するイメージもすっかり変わった。体が成熟するにつれ、脳も大人へと成長しているのかもしれない。
「僕への忠誠心を、態度で示しなさい」
遥香の自慰行為を撮影するために、櫻井が携帯電話をかまえる。
「一人エッチをすればいいんですか?」
「おいおい、せっかく二人きりなんだし、もっと空気を読んでもらわないと」
「はい、あのう、ええと、オナニーを……」
「うん?」
刃物のように鋭い眼光を放ち、櫻井が訊き直してくる。
遥香は唾を飲み込んだ。
「私のオナニーを、ちゃんと見ていてください……」
そう言うとお下げ髪の遥香は白いシャツを半分ほど脱ぎ、女の子が飯事(ままごと)をするような手つきでローターをもてあそんだ後、そっとスイッチを入れた。
玩具が産声をあげて小刻みに震え出す。それはまるで鈴虫の羽音みたいだった。
遥香は片方の乳房を下から支えると、先端の小さな突起にローターで触れてみる。
「あんっ」
心地よい微弱電流が乳頭を痺れさせる。
「んっ、ふん、ううん……」
悩ましい吐息を漏らしながら、あどけない女子中学生がローターと戯れている。細長いコードに指を絡め、二個あるローターの片方を乳首に、そしてもう片方を陰部に押し当てて、携帯電話のカメラの前で火照った体を慰める。