第3章 刑事魂-2
(酒ついでオッパイ触らせてニコニコしてるだけで大金ゲット出来るなんていーよなぁ。ちょっと可愛ければモテモテだ。あいつらには勉強とか必要ねーもんな。だが世の中そんな甘くはないって事も教えてやらなきゃいけないしな。まー勉強させてやっても所詮は冥土の土産にしかなんないけどな。)
店の前で酔っ払いの男に胸元を覗かれて嬉しそうに隠すキャバクラ嬢を見てそう思った。
(しかしさっきのソープのネーチャン、最高だったな。凄いテク持ってたな…。あの腰使いはハンパじゃねー。あんな早くイッちゃったのは初めてだ。思わず2回戦しちゃったよ!嫌がる女を無理矢理犯すのもいいが、あーゆーふうに全てを任せられる女もいいかもな…。あのネーチャンはカリントウの割には働いてるなぁ。あのぐらいじゃなきゃ高級取りの仲間に入るのは許せないよな、やっぱ。)
いい働きぶりに珍しくそういう女を認めた犯人。自分を体を使って金を稼ぐカリントウ女を成敗するヒーロー的な人間に思い始めていた。自分を悪だと思っている人間はいないのかも知れない。たいてい自分は正しいと思っている筈だ。この犯人もまた自分を犯罪者などとは思っていない。そしてそれは手錠をかけられた時にようやく自分は犯罪者なんだと気づくのかもしれない。
犯人が強盗、強姦をした後に殺害したキャバ嬢の中で、一人だけ強く印象に残っている女がいる。それは日向市のキャバクラ、ミストで働いていた女、源氏名彩香だ。彩香は最後の最後まで犯人を睨みつけ犯行的な態度をとったまま首を絞められ死んで行った女だ。泣き叫び、そして怯えながら死んで行く女達が多い中、彩香だけは命落としても永遠に自分を呪うであろう目で睨みつけながら逝った。その犯行的な態度に犯人は鳥肌が立つような興奮を覚えたのであった。これから狙う美弥妃はそういうタイプの女だと言う事は知っている。
美弥妃は人気ナンバー1になる為には平気で枕営業出来る女だ。しかも自分に利益をもたらす金持ちにだけ抱かれる女だ。非常に計算高い。それは有名な話だ。今住んでいるマンションも、乗っている赤い高級外車も全て客からのプレゼントだ。そのレベルでなければ今日の犯人への接客のように仕方ないから形式的に、当たり障りのないようにサッと現れ、サッと去って行く。もし接客してる間に犯人が金の匂いをチラつかせたならば、恐らく目の色を変え本気で接客して来た事であろつ。そんな腐った性根が犯人には美味しい御馳走なのだ。そんな女が多いからが故に犯人は自分をヒーローなのだと勘違いさせてしまうのかも知れなかった。
呼び込みも、キャバ嬢も、すれ違う酔っ払いも全員、髪を七三分けにしメガネをかけ、ネクタイを締めスーツを着ている、一見商社に勤めているような男を、誰も連続強盗強姦殺人犯だとは思わなかった。