第17話 『全裸体育祭、開会式』-3
「当学園の体育祭では、各学年3クラス構成のうち、クラス対抗で競技します。 各学年の1組連合、つまりA、B、Cグループの1組が1つのチームになり、2組チーム、3組チームと競います。 その3チームから代表1名が『クラス旗』となりまして、体育祭での士気を高めるべく、最も見やすく太陽が当たる場所で膣を披露する役目を勤めます」
「……なるほど」
「図柄は、3組が『勝利を祈るオマンコ』と題します。 アクリル絵具でM字開脚する牝をペイントし、体育委員のホンモノの膣を画中人物の膣に扮した作品です。 画中人物の股間にも、もう1人M字開脚する牝が描いてあるので、1つの膣が、都合3人の牝の膣を表していて、真ん中の牝がBグループ、奥の牝がAグループをそれぞれ表しています」
分かったような、分からないような解説。 南原は苦笑しつつ、
「……ほほう」
一応相槌は打つ。 M字開脚した少女にボディペイントすること自体が趣味じゃないのに、ボディペイントの中にまでペイントするなんて、全く持って理解不能だ。 いや、正確には『完璧に理解できている』のだが……南原としては、理解してしまう自分に苦笑いを浮かべるしかない。
「2組は『みんな仲良し2組』と題します。 周辺の点字で先輩への感謝を、中心の『2』でクラスを表しています。 点字はクリトリスによる実印、文字は膣によるマン拓
を重ねて描いていて、自分たちのクラスが膣で出来ており、勃起したクリトリスを通じて感謝する心構えを表しています」
「ふむ……」
体のパーツを使って描くというコンセプトは意味不明だが、絵としてはさっきよりも好印象だ。 クラス旗に描かれた点字に登場する『だいすき』という文字は、学園を査察するたびに『おまんこ』『肛門』『変態』『マン滓』といった下品な文章を浴びてきた南原にとって清新だった。
「1組は『淫乱牝犬1組集団』といいます。 膀胱に絵具を溶かして注入し、まっすぐ排泄して描いた『1』が、無数に重なって出来ています。 上級生をはじめ、全員が交互にクラス旗を跨いで排泄して、それだけ多くの『1』を集めることで、一位に賭ける心意気を高める旗が仕上がった、とのことでした」
「……なるほど」
色使いが絶妙に綺麗な旗だった。 明系の色で統一された抽象画、といったところだろうか。 見ているだけで気分が高揚してくるような、前向きな華やかさがある。 もしも『オシッコをかける要領で描いた』ことを知らなければ、素直に気に入ることができただろうに、勿体ないことをした。 説明を聞いてしまった以上、たくさんの生徒に絵具入り尿を浴びせられる憐れな少女が南原の脳裏に浮かんでしまう。 これでは素直に楽しめやしない。
プァー、プゥー、パゥー……。
吹奏楽部が一番の演奏を終えるタイミングで、すべての旗が掲揚台にはためいた。 もっとも少女3人分に関しては『はためいている』というよりも、腰と脚を懸命に揺らしてホンモノのように『はためかせている』わけだ。 南原に疑問が浮かぶ。 あの少女たちは、これから体育祭の間中、ああやってホンモノの旗のように見せるためだけに、自分の股間を開帳しながら揺らし続けるつもりだろうか。 何時間も、しかも太陽が照りつける中、休まず揺らせるものだろうか――?
南原は敢えて疑念を口にせず、周囲の来賓が腰を下ろすのに合わせて自分も座った。 もし仮に南原の疑問がその通りだったとしても、南原は何の行動も取りはしない。 どのみち体育祭が終了するまで観戦することが仕事だから、遅かれ早かれ分かることだ。
『体育委員長基準。 全校生、体操の隊形に、開けッ』
放送に合わせて生徒達がグラウンド一杯に広がり、体育委員長に合わせてラジオ体操が始まる。 1つ1つの動きに合わせて膣を開閉するため、来賓席までマン臭が漂ってきそうな体操だ。 チラリ、南原は視線を手元のプログラムに落とす。
『プログラム0番 開会式 開式の辞 来賓挨拶 国旗及び諸旗掲揚 体操』
『プログラム1番 大縄跳び』
『プログラム2番 大玉転がし』
『プログラム3番 棒倒し』
……。
『プログラム20番 クラス対抗リレー』
『プログラム21番 ……』
……。
――そこまで読んで、南原は小さな溜息をついた。 まだプログラム0番さえ始まっていない状況で、このあと、少なくとも20以上のプログラムが控えている。 詳細なレポートを自身が書かなくてはいけない以上、ずっと目を閉じているわけにもいかない。
「しょうがない、か……」
意図せず呟いた一言は、紛れなく南原の本心だった。