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日常Breaker
【コメディ その他小説】

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日常Breaker-2

「欲しかった服あったのにな…」
「あの、よろしければ、自分が着ている花嫁衣装を、買えなくなった服の代わりにどうぞ」
「いえ、気持ちだけで結構です」
即答!
当たり前だ。彼が欲しかった服は、ボーダーのポロシャツと生デニムで、花嫁衣装とは、かなり対照的な服である。
「あの…どうして、そんな…前衛的な格好を?」
沙耶が、ようやく重要な質問を切り出した。
「…分からないんです。記憶が…なくて」
「記憶喪失…」
スキンヘッドは、箸を置き、目を伏せてしまった。
「覚えているのは、自分が何の変哲もない野良ボディービルダーということだけなんです」
「とりあえず辞書を引いて、変哲の意味を思い出させてあげようか。この変哲の化身に」
「せ、先輩、話を聞きましょうよ」
「気が付いたら、お二人に助けていただいて…。名前も、家も思い出せないんです。…すみません」
思った以上に深刻な事態に、二人は黙りこんでしまった。しんみりとした雰囲気の中、沙耶が口を開く。
「じゃあ、記憶が戻るまで先輩のおうちに…」
「また俺かよ!」
泰久の、さまぁ〜ず的なツッコミが炸裂する。
「記憶がないんだよ?病院と警察のお世話になった方がいいって」
「先輩!ここまで来て、ストーリーの王道を無視するんですか?道に、謎な人が倒れていたら、自分の家で一緒に暮らさないといけないんです!展開的に!」
「倒れてるのが絶世の美少女たちだから、男どもが下心丸出しで家に連れこんでるだけだって!」
「いいんですか?こんな作品を、ここまで読んでもらっておいて、読者を裏切るんですよ、先輩は」
「読む奴いないし!」
「ここから先は、あの人と先輩が同居する以外にストーリーを展開する術がないんですよ。御両親は長い海外出張で、家には妹さんしかいないんだから、いいじゃないですか」
「なに言ってんのさ、昨日うちの親に会ったじゃない。俺は一人っ子だし」
「え?こういう場合は、普通両親不在で妹と二人暮らしのはずです」
「いやいや、そう都合よくは…」
『愛とはなんぞやぁぁぁ』突如、泰久の携帯の着声が鳴り響く。ゴッツイ重低音のシャウトだ。
「あ、メールきた」
「先輩、私といるときは、その着信は鳴らさないで下さいね」
「えぇ〜、何でよ……って、うぇぇぇぇ!?」
「ど、どうしたんですか?」
泰久は、メールの文面を読んで驚いた。
「父さんと母さんが、今日から海外出張に行くって」
これは、さすがにありえない!
「だって、うちは自営業でスーパーやってんのに、出張の必要ないじゃん」
さらに、メールを読み進めていくと…。
『スーパーは、従業員に代理を頼んだから、心配しなくていい。お金も毎月一日に振り込むから、妹の華奈と一緒にガンバりなさい』
…………目をこすって、読み返す。
『妹の華奈と一緒にガンバりなさい』
頭を整理して、さらにもう一度読み返す。
『―妹の華奈と―』
「お、お、お、俺に妹が出来たーーー!?」
「す、凄いですよ!奇跡が起こりました」
「くそぅ!神(筆者)め、そこまでして俺とコイツを同居させる気か!?」
「先輩、諦めてください。神の意思からは逃げられません」
「あぁ、なんてことだ」

「私は、皆川沙耶です。こっちは私の彼氏で、幾島泰久です」
幾島家に向かう道で、沙耶はスキンヘッドに自己紹介をした。それを受けて、彼は、少し慌てる。
「あ、あの、すみません。自分は…」
「記憶、ないならニックネームをつけようよ。どんなのがいい?ガリクソン?」
「先輩、いきなりゴッツイの出しましたね。私としては、可愛らしくドドリゲスがいいです」
「か、かわいいのか」
「皆さん、ありがとうございます。とりあえず、自分はカメナシかツマブキがいいですね」
「…カメムシ?」
「…ツマハジキ?」
「駄目ですかね?」
スキンヘッドが、照れ臭そうに頭をポリポリと掻いた。スキンヘッドの亀梨や妻夫木と言うには、やはり無理がある。


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