家政婦との小旅行-6
発注を終えたアスカはコの字のソファーに腰を降ろして珈琲を啜る僕の瞳を頬杖をついて覗き込んでいた。
「あなたは一体何者なの?」
「アスカ、それは聞いて良いことなのか」
「何者?」
芯の強い女を伝えるメッセージだった。日本人らしい幼い素顔で芯を貫くそのスタンスに納得の頷きを返してあげていた。24歳のアスカが此処まで辿り着いた事実を素直に認めていた。崇高な気配を消してリラックスした空気に変えたアスカの技術に、目を細めて微笑んであげていた。
「そうだな。最終日に教えてあげるよ」
「本当かなぁ。約束だからね」
片腕に顔を寄せて頬杖を付け直したアスカは、明らかに雰囲気を変えていた。長い黒髮を巻き上げて素顔を晒した危うい瞳は、完全なプロを伝えるメッセージだった。アスカは僕の口許を見つめて、何も言わずに襲われるその時に備える気配を漂わせ始めていた。
「凄いな」
「そうかな。いつでもどーぞ」
見事な受け応えだった。