第2の犠牲者-1
朝6時、山中からマギーに電話が入った。その電話が意味するものは分かっていた。再び全裸張り付け事件が起きたであろう事が。
マギーはまた張り付け事件が起きる可能性を考えると早くに目が覚めてしまった。電話が来た時にはすぐにでも出動出来る準備が出来ていた。
「悪いなマギー、朝早くから。やっぱり起きてしまったよ、例の事件が。今度は城南市の市役所の玄関だ。被害者は小渕愛子と言う前城南市長の梶原博之の秘書をしている女性だ。犯行声明は彼女の…その…性器にに突っ込まれていたそうだ。現場の調べはもう始まっている。マギーは至急県警本部に来てくれるか?」
「分かりました。」
電話を切った後、とうとうこの瞬間が来てしまったかと思った。マギーは鏡を見つめ不安そうな自分の顔を睨みつける。
マギーは言葉も発する事もなくすっと立ち上がる。しかしその姿にはこれから大きな事件に指揮者として立ち向かう意欲に満ち溢れていた。捜査本部長を任される事にはもはや何の不安もなかったのであった。
「おはよう。連絡来た?」
マギーは運転しながら華英に電話をした。
「ふぁい、来ましたぁ…今準備してるとこですぅ…」
あまりの締まりのなさにマギーは呆れて笑ってしまった。
「あと20分で着くから、私が迎えに行った時にはシャキッとしてなさいよね?」
「了解〜。」
そう言って電話を切る。
マギーが華英の家に着くと、華英はすでに準備万端状態で門の前に立っていた。
「遅いじゃないですかぁ〜♪」
「よく言うわよ。さ、乗って?」
「お邪魔しまーす。」
さすがだ、もうすっかりシャキッとしている。もともと切り替えは早い方だ。勤務中も疲れただの眠いだの文句を言いながらもやる事は求める以上の事はやる。それをちゃんと理解しているマギーは華英を信頼しているのであった。口は達者で良く人を食ったかのような発言はあるが、そこは若菜とずっと同行していたマギーだ。若菜の強烈かつ悪意すら感じるイジリからすれば可愛いものであった。何より一緒にいて疲れない存在なのが華英なのである。
「いよいよ本腰を入れて捜査しなきゃならなそうですね、捜査本部長!」
「…、馬鹿にしてるよね?」
「してませんって、ボス!」
シャキッと伸び切らせた指で敬礼してみせる華英。
「人のこと馬鹿にしてると後で大変な事になるわよ?」
「大変な事って何ですかぁ??」
「…」
「あ、特に何も考えてないんですねボスッ!」
ニコニコ笑う華英にマギーは悔しさを感じる。
「朝からムカつくわね…」
「まー、そんなにカリカリしないのっ、ボ・ス♪」
「フンッ!」
そんな会話をする2人だが、こんな華英の会話がマギーの体にのしかかるプレッシャーと言うものを忘れさせてくれるのも事実なのであった。