第2の犠牲者-3
石山は神妙な面持ちで会議室全体を見渡してから重々しく口を開いた。
「おはよう。ご存知だとは思うが、昨日城南市長の佐川明子氏が城南駅前に全裸で張り付けられ放置されると言う事件が起きた。直後にREVOLUTORなる者から犯行声明文が届いた。その中には連続性を感じさせる記述があった。明日も犯行を行うと言う内容だ。」
モニターに犯行声明文が映し出された。
「そして犯行声明通りに今度は城南市の市役所前に全裸の女性が張り付けられ放置されていた。その女性は前城南市長の梶原博之氏の秘書である小渕愛子氏である事が判明した。同時に犯行声明も発見された。同じREVOLUTORという者からだ。犯行声明通りに事件が起きた事で我々は対策捜査本部を設置し捜査する事になった運びだ。城南市における事件は過去にも大きな事件に発展している事を考えれば、今回も同じような危険をはらんでいると判断し、本格的に捜査に当たるよう警視総監からも指示があった。そこでまず第1回目の捜査会議を行うために皆さんには集まってもった訳だ。なおこの対策捜査本部の指揮を執ってもらうのは菜月マーガレット…マギーに任せる。マギー、前に。」
「はい。」
マギーは緊張した面持ちながらも実に凛々しい姿でハイヒールの音をカツカツと響かせながら上座へと歩く。そして振り向くマギーは実に堂々としていた。この2年間、必死で努力してきた。初めは女を軽視する男性刑事も多かったが、今では実力を認められマギーを女のくせにと思う刑事は県内にはいない。むしろこの案件の捜査本部長にはマギーが適任だと誰もが感じた。見た目から冷たそうに思われがちだが、マギーと言う人間に触れ中身を知った者はなぜか理解を示してしまうと言う不思議な魅力を持っている。それがマギーであった。
「今回この事件の捜査本部長を務めさせていただくマギーです。これからどうぞよろしくお願い致します。」
まず一礼するマギー。
「私は事件解決の為には下らないプライドなど持たない所存です。もちろん刑事としてのプライドは常に持ちながら、たくさんの皆様が汗水垂らして集めて来てくれた情報を1つ1つ丁寧に検証して行きます。どんな些細な情報でも出来るだけ多くご報告下さい。私は上原若菜警視総監を見て育ってきました。ですから机に座りっぱなしでいるのは到底出来ません。私もどんどん現場に出て汗水垂らして頑張るのでご協力の程、宜しくお願い致します。」
再度一礼するマギーに誰からともなく声が飛んだ。
「相変わらずマジメだな、マギー!」
マギーは苦笑した。
「あのー、見かけによらず緊張してるので野次は控えて下さると助かります…」
「そのようだな!」
会場が笑いに包まれた。野次の主は城北署のベテラン刑事の片桐勉であった。会った時には気さくに話してくれるいいオジちゃんと言った感じだ。片桐だけでなくマギーはベテランから人気があるのであった。