終わらないハロウィンパーティー 〜狼は甘いものがお好き〜-1
「今日はこのまま帰したくない」
彼がわたしの耳元でささやいた。甘く、熱っぽい声だった。
熱を帯び、こっくりと形を変えていく飴のように腰がしなった。
肌がバラ色に染まり、白いレザーの首輪をより際立たせる。
鎖がシャラシャラと音をたて、その存在を改めてわたしに知らせる。
「ねぇ、ちょっと待って……」
ソファーの上、すっぽりとわたしを抱いた彼の腕に、右手をかけながらわたしは言った。
「待てない。狼だって、赤ずきんちゃんを食べたくて仕方なかったんだから。俺、ずっとチャンスを待っていたんだ。それに、強欲だから甘いものも欲しいし、イタズラもしたい」
そう言うと、彼はわたしの胸元にかぶりつくようにしてキスをした。何度も──何度も。
熟れた果実の蜜がじゅわりと滴り、溢れ落ちそうになる様が頭に浮かんだ。それは──わたしの身体の内側にある。
「ずっと……見てたんだ、君のこと」
彼の言葉が頭の中を旋回する。
それって、どういう……。
考える隙を与えまいとするかのように、彼がわたしの耳たぶをくちに含んだ。ふちをなぞるように舐め、舌を這わせる。
短く湿った声が、わたしのくちから零れ落ちていった。
「こんな挑発的な格好をしている君が悪いんだよ。いくらイベントだからって、こんな……」
わたしの背中にまわされていた彼の手が、首輪を軽く引く。
シャラリと鎖が鳴り、首輪が軽く肌に食い込んだ。
「紗奈ちゃんって、マゾっ気があるの?」
「──っ!」
羞恥心に頬がカッと熱くなった。
「だって、そうじゃない? チョーカーとは言えないよ、これ。首輪、だよね。こういう趣味があったなんて、知らなかったなぁ……」
「お願い、誰にも言わないで」
「言わないよ。俺だけが知っている君の秘密。他の誰も知らない……よね?」
「ええ、誰も知らないわ。だから、黙っていて」
「黙っている代わりに、俺の彼女になる──っていうのはどう?」
わたしが言葉をくちにするよりも先に、彼がわたしの鎖骨あたりにくちづけをした。