つがい-8
よく朝、起きると悟の姿はなかった。
1枚の短い手紙が残されているだけだった。
「美香、3年間本当にありがとう。
俺の全てをかけて愛していたよ。
俺は子どもを残す気はなかった。
孤独な一千年を経験させるのは酷だと思ったからだ。
でも―――俺の弱さを許してほしい」
涙は、流れて止まらなかった。
「やだ。ばれてたんだ」
少し強めに唇をかんだ。血が出るほどに。
それをキスした時に悟の舌に押し付けた。
上手くいく保証なんかなかった。
悟は全て分かっていて、最後の最後に私の中に精を放った。
「私だって弱くてごめん」
悟の子供が欲しかったの。
悟の花嫁になりたかったのよ。
悟の思い出が欲しかったの!
もし・・・
悟の言う「弱さ」が生きた証を残すことならば。
悟は私の血を感じていた。
その上で、悟は私に精を残した。
「一千年目がいつだか忘れたなんて・・・嘘ばっかり」
悟は昨日が最後だと知っていたに違いない。
だから。
だから私に別れを告げたんだ。
突然いなくなるよりは、と。
昨日のデート。
1日中、悟はどんな気持だったのか。
「バカね」
一緒に泣いてあげたのに。
私に嘘をつき通して
泣くことさえしないで、無理して笑顔で1日を過ごして。
「バカね」
悟の笑顔しか思い出せないよ。
それなのに私は涙が流れた。
私はそっとお腹をなでる。
そして確信する。
私たちは『永遠の番い』となった―――