投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「夏の出来事 5」
【若奥さん 官能小説】

「夏の出来事 5」の最初へ 「夏の出来事 5」 454 「夏の出来事 5」 456 「夏の出来事 5」の最後へ

霧と砂嵐-1

ちづるはすぐに深い眠りに落ちた。

夢を見た。

*** 

夢の中。

ちづるは広い霧の中、
ぼんやりと突っ立っている。

辺りは薄暗く、霧の先は見えない。

嫌な場所だ、と直感する。

ここにいると嫌な気分が
増してしまいそうだと思い、
パジャマ姿のちづるは
とぼとぼと歩き出す。

しばらく歩くと、
目の前に球体の砂嵐が現れた。

背丈ほどの
グレーの球体の砂嵐を
見ていると、
心が落ち着かなくなる。

きっとこの中は
薄暗い今いる場所よりも
もっと嫌な場所だろう、と予感する。


「、 、 、、 、。」



砂嵐を避けて前に進みたい気持ちと
中に入らなければ
いけないのではないか、という
妙な気持ちとの葛藤が始まる。

しばらく砂嵐を見つめていたが、
意を決して砂嵐の中に入った。

砂嵐の中は、静かだった。

静かすぎて耳に違和感を感じる。

テレビの砂嵐のように
空気中にノイズが入っているようで
前がよく見えない。

そしてなにより、落ち着かない。

ここにいるだけで
手に冷や汗をかいてきて
手のひらはぐっしょり濡れてきた。

パジャマの裾で、
手のひらを拭きながら歩く。


「、 、 、 っ、 
       早く  」



   早く   行かなきゃ 




歩くスピードをあげる。

ほんの一瞬だけ、何故
早く行かなきゃいけないのか
考えようとしたが、
その思考はすぐに消え去る。

身体のが素直に動いた。

いつの間にか走っていた。

走りながら
心の中の悲しみが溢れ出す。

この悲しみは
どこからきたのだろうか。

きっと、
自分が走った先に
この悲しみの理由が
あるような気がする。



「 、 〜っ はぁ、 、
  〜っ     、 、


         ぁ、 。 」




        いた 


    見つけた 



最初に見つけたのは、
真っ白なマグカップだった。

中身は空っぽで、
コバエが1匹その周りを
飛んでいる。


ゆっくりとマグカップに
近づき、腰をおろして
ちづるはしゃがむ。

マグカップの先に、
体育座りをしている
綺麗な顔の男の子がいる。

10歳ぐらいの男の子は
上下黒い服を着ていて
背中を丸め、ぼんやりとして
マグカップを見つめている。

ちづるが男の子に言う。


「 、、だい じょうぶ?」



「、 、 、、、 、。」



「、、あの、 
 ここで、何してるの? 」


「、 、 、、、。 」



「  〜っ  、 、」





   私、 この子に


     何を 言えば 



   『ずっとここにいたの?』
  
 『寂しくなかった?』
 
  『いつから独りだったの?』



 
   、 、、、 っ  、  




「 、 、 ぁ 。 」


気がつくと、
マグカップの周りを飛んでいた
コバエが1匹から2匹に
なっている。

ちづるは手でその虫をはらう。

マグカップを持ちながら言う。



「 ねぇ、、
 一緒に 行こう? 」


「、 、、、 。 」



男の子はちづるを見ず、
静かに首を横にふった。

その表情は無気力そのもので
見ているだけで悲しみが
込み上げてくる。

もう一度、言う。


「 行こう? ね? 」


「、 、 、、、いい。」


「 どうして?」


「 、 、、」 


「、 、 、、ねぇ、 、
      どうして? 」


「、 、 、 、 、 」


「 喉、乾いてない?
 これ洗ったら何か、、
   飲むものいれるから、、。
      行こう?    」




「 、 、 、、、。
     
      いいよ、 もう 」 



「 〜?  、 、、っ  」




「、 、 、 、、 、。」






「 〜っ  !   っ 
   なんで  
   っ  〜っ   !?  
       
        〜っ    」


    声が  出ない ! 



       言わなきゃ 



  〜っ  、 、 早く  



    でも 何を? 


      何から 


    


   〜っ  タクミくん 


*** 



「 っ はっ  〜っ ? 
 っ、 はーーー、、、? 
     〜っ  ぁ 。  」




     夢、 、 ?


       ぇ? 

  でも  あれ?

   
  空気が  〜っ !? 




ハッと目を覚ましたちづるは
部屋の天井を見ている。

暗い部屋の空気の中に、
砂嵐がほんの少し混ざっていて
空気がチリチリと動いて
豆電球が、よく見えない。

寝ぼけているのか、
本当に砂嵐がそこにあるのか
分からず、何度も瞬きをする。

徐々に、砂嵐が消えてゆく。


「夏の出来事 5」の最初へ 「夏の出来事 5」 454 「夏の出来事 5」 456 「夏の出来事 5」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前