霧と砂嵐-2
砂嵐は消えてゆくが
嫌な胸騒ぎがする。
背中に汗をかいていたのが分かる。
ゆっくりと上半身を起こす。
「はぁっ 」とため息をついてから
隣のベッドを見ると
タクミがいない。
「 、? 、 、」
いない
トイレ かな、、、
勉強机の上の
目覚まし時計を見ると2時だ。
布団から起き上がり
ちづるは部屋から出て
隣のキッチンへ向かう。
「 、 、、 ? 」
隣の部屋は暗かった。
キッチンの流し台の上の
小さな蛍光灯だけついている。
隣の部屋のテレビがついていて、
テレビの前の茶色のソファーに
タクミは体育座りをしていた。
背中を丸めて
ぼーっとテレビを眺めて動かない。
一瞬だけ脳裏に、
夢に出てきた男の子がチラついた。
ちづるの足音に気がついていないのか
こちらを見ない。
ちづるが声をかける。
「、 、 タクミ君? 」
「、 ん? ぁれ、、?
どうしたの? 」
「 ん? うん、、、。
タクミ君が、いなかったから 」
「んーー? うん、、、。」
「 電気、、つけないの?
ぁ 。 テレビ、観てたの?」
「 、、、うん。」
「、、、隣で観ればいいのに 」
「んーー?
でもちづちゃん、
ぐっすりだったから〜 」
ちづるは話しながら
タクミの隣に座った。
テレビでは韓流の
恋愛ドラマがやっている。
画面では女性の顔がアップになり、
涙ながらに何かを訴えている。
字幕を少しだけ追いかけながら、
ちづるが言う。
「、 、、なんか、珍しい 」
「 、、ん? 何が?」
「こういうの、観るっけ?」
「 ぁーーー、、、。
観てたってゆーかぁ〜〜 」
「 ? 」
「、、なんか眠りが浅かったから。
目ぇ開けて、寝てたかもーー。」
「 ぇー? ふふっ 」
タクミは寂しそうにフッと笑う。
ちづるが心配そうに言う。
「、、、寝れないの?」
「 んーー、、、 少し 」
「 、 、 、 、、。 」
「 ぁーー、、でも。
心配しないで?
今も、、、
ウトウトしてたし〜〜。
目は開いてたけど。 」
「、 、 、 、、。 」
「ちづちゃんは、、
寝たほうがいいよ? 」
「 、 、 、、、、 、」
「 ? どした? 」
「、 、 、、 、。」
タクミ君は
やっぱり 優しい
きっと 今、
何かを 無理してる
、 、 、、でも
何を?
あと少しで
気がついて
あげられそうなのに
「ちづちゃん? 」
「、 、〜っ ぁの、、、」
何か
なんだろう
違う
私は
分かってる はず
その時。
テレビから鐘の音が聞こえた。
2人は同時にテレビを観る。
テレビの中ではストーリーが
いつの間にか進んでいた。
ウエディングドレスを着た女性と
真っ白なタキシードを着た男性が
肩を並べて幸せそうに
教会のバージンロードを歩いている。
ちづるが呟く。
「 、 、 、、結婚 、 」
『俺とー、、
結婚して。 』
始めて言われたのは
確か、タクミ君と
2回目のエッチをした後
、 、、、、
その後は?
何回、言われた?
何回が冗談で
何回 本気だった?
分からない
「〜っ 、、 っ 」
違う
分かる
「 〜っ 、、 っ
ぅ 〜っ、、、 」
ちゃんと 本気の時
あった事
私は もう
分かってる
「〜っ っ、、、 っ 」
「 ちづちゃん?
どしたー? 急に感動? 」
「 っ、、 〜っ 」
「 っつーか、、。
ドラマの内容、分かってた?
って、俺も
あんま観てなかったけど、、、。」
タクミは
うつむいているちづるに近づくと
背中をさすり、顔を覗きこむ。
背中からタクミの手のひらの
温かさを感じながら
ちづるがうつむいたまま言う。
「 〜っ 、、 結婚 」
「 ん? 」
「 〜っ 結婚 、する、、
あたし 」
「 、 ! 」
「〜っ 、 、、 っ 」
「、 、 、 、 、 。 」
タクミの手の動きが
ピタリと止まった。