食欲-1
「 最近、食欲落ちた?」
3日後の火曜日。
いつものようにキッチンの
テーブルで夕飯を取っている2人。
少し心配そうにちづるは
タクミにそう聞いた。
「、 、んーんーー、、。
落ちてないよ。 」
「、、そう?」
「、、、うん。 元気 、 」
「 、、。そっか。
でも、6月なのに暑いねぇ〜。」
「 、、うん。 」
「湿度が高いと、
身体もなんかダルいよね。」
「 、 ん 」
「、 、 、、、。 」
2人はなんとなくテレビを観る。
タクミは
目の前にいるちづるをじっと見る。
髪型はポニーテール、
服は紺色のTシャツを
着ているちづるは
バラエティー番組を観て
「この人達、好き〜」と、
独り言のように呟く。
タクミはそれを聞いて
テレビのお笑い芸人の
コンビのネタを少しの間、聞いていた。
ネタが終盤になると
タクミが言う。
「今週はずっといれる?」
「 ん?」
「、、うちに。
ちづちゃん木曜休みでしょ?」
「 ぁ、 んーーとね。
木曜、ちょっと
出掛けようかなって思ってて、、。」
「、 、 、、」
「お母さんと、、
北口に新しく
レストラン出来たでしょ?
ピザが、有名みたい。
ランチしようって言ってて。」
「、、ふぅ〜〜ん、、。 」
「 ? 」
?
なんか やっぱ
タクミ君 元気ないなー。
「、、、。 仲良しだね。」
「 ぇ? 」
「お母さんと。」
「 ? そう? 」
「、、、。
出戻りで恥ずかしいって
嫌味言ってくるって、、。
前にちづちゃん、
言ってたじゃん。 」
「 ぁーー、、 ふふっ
今も言われるよー?
親戚からご祝儀頂いたのに
とか。 ふふ、、、 」
「、、、 、 、、。」
「 、 、 ? 」
ほんの少し
気まずい様子のちづるは、
視線をテレビに戻す。
テレビでは
さっきとは違うお笑い芸人の
コンビが出てきていて
ネタを披露している。
しばらくの間、それを観ていたが
タクミが再び呟いた。
「なんで、、、。
来てくれるんだっけ 」
「 ん? 」
「ちづちゃんは、、、
なんで、 ここに 」
ぇ ?
俺
何言ってんだ?
「 え? 」
「 、 、 、なんで 」
なんで
って、、
なんだっけ
、 、、 、。
あ 。
セックス だっけ
そうだよ な
最初から
「 タクミ君? 」
「 、 っ 、、 ぁ 。」
タクミはハッとする。
心配そうにしているちづるの顔を
見ないまま、下を向いて
小さな声で
「なんでもない。
ごちそうさま。 」
と、言うと立ち上がり
風呂場へ向かった。
タクミの、
グレーのシャツの後ろ姿を
眺めていると
脱衣所のドアがバタンと閉まり
タクミの姿はもう見えない。
ちづるは、
テーブルの上をぼんやりと眺める。
タクミの茶碗には
今日もご飯が半分残っていた。