投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

bitter bitter sweetの最初へ bitter bitter sweet 79 bitter bitter sweet 81 bitter bitter sweetの最後へ

♥勝手に浮かんでくる男♥-9

一人になると、いくらか落ち着いてきた。


スタッフルームの休憩用の椅子に力無く座り込んで、ボンヤリと視線を移してみれば、掛時計は14時を過ぎたばかりだった。


今日は、1クロ。13時からラストまでのアルバイトの予定だったのに、あたしが突然泣き出してしまったせいで、店長から早退を言い渡されたのだ。


あたしは何度も早退なんてしなくていい、平気だと訴えたけど、店長はガンとして譲らず、ほぼ無理矢理スタッフルームに押し込んできた。


そんな強引なことをされて引き下がる性格じゃないあたしは、隙を見てまたフロアに出てやるつもりだった。


だけど、その後小夜さんがすぐここにやって来て、


「アレも店長の優しさのつもりだから」


と困ったような笑顔であたしにそう伝えたのだ。


店長の優しさなんて、十分わかる。


本当は、彼の今日のシフトはオープンから15時まで。


クローズのあたしを早退させたら、店長はオープンからクローズまでの通しになってしまうじゃん。


不可抗力で泣いてしまった自分が情けなくて、知らずに下唇を噛み締めてしまう。


それに、本当に早退なんてしたくない。


今、身体が空いたって、家に帰ってもパパがいないんだから。


あたしの誕生日よりも不倫相手を取ったという現実だけが、あたしに叩きつけられるだけなんだから。


また、目の奥がチリチリと痛み出す。


やっと涙が治まったと思ったのに、また目の奥からジワリと溢れてくる。


誰か、あたしを助けてよ。


誰か……。


不意に浮かぶあの真剣な顔。


−−松本っ、助けに来たぞぉ!!


そしてついに飽和状態になってしまった涙は、頬をスウッと伝い落ち、勝手に唇が動いた。


「助けて、天野くん……」


あたしの涙が床にポタリと落ちたその時、スタッフルームのドアがガチャリと開いた。




bitter bitter sweetの最初へ bitter bitter sweet 79 bitter bitter sweet 81 bitter bitter sweetの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前