第六章 越えがたい-2
「ああ、なんて素敵なんだろう。僕は今、とっても幸せな気分ですよ。」
サユリさんは小さく微笑んだ。
「私のそこが欲しくて、何人ものオトコが私のカラダの上を通り過ぎていった。」
「あの、表現は詩的だけど、スゴイこと言ってますよ。」
「ふふ、そうね。でも、そうとしか言えないのよ。だって、みんな私が着ているものを剥ぎ取って、乱暴に鷲掴みしたりつねったり。横から噛みつかれた事もあったわ。けっこう長い間歯型が消えないくらいに。私はそんなやり方は望んでいないのに。だから、彼らはただ通り過ぎただけ。」
「サユリさんはそんなことでは満たされない。」
「そう。やっぱりあなたには分かるのね、うれしい…。」
俺は手のひらをゆっくりと動かした。そっと優しく。けして力をかけないように。
「ああ、そう、そうよ…。私は、そんなふうにこそ愛されたかったの。」
「分かっているよ、サユリ。僕に任せて。」
一周り歳上ですっかり成熟した大人の彼女が、少女のようにはにかんだ表情でコクン、っと頷いた。
俺の手のひらの中でサユリの敏感な先端が微かに擦れている。徐々に手の動きを大きくしていくと、それに呼応するように彼女の息が乱れていった。
目を閉じて小さな声を漏らすサユリの胸から腹へと頬ずりしながら下がっていった。吸い付くようにしっとりとした肌が心地よい。少し舐めた。サユリはくすぐったそうに少し笑った。お腹の両サイドのくびれは完璧な曲線を描いてスカートの中へと続いている。サイドのホックを外し、ジッパーを下げて、裾を持ってゆっくりと足首の方へ引っ張った。豪華な装飾の付いた下着が表れた。
その布を少しめくると、豊かな茂みが現れた。俺がそこに唇を這わせると、身をよじり、彼女はクスクスと声を漏らした。
「なあに、そんなところに。」
「もっと下の方がいい?」
「それは…。」
俺は下着の腰の部分に手をかけた。少しずつ、少しずつ捲っていく。
「ね、お尻を少し持ち上げて。」
腰が浮いたところでスルリ、っと膝まで引き下ろし、そのままゆっくりと足首から抜き取った。
「あ…。」
サユリは太ももを寄せて隠そうとした。
「ムリに見ようとはしないよ。君が見せてもいいと思うまで待つから。」
サユリはしばらく俺を見つめていたが、視線を落とし、ゆっくりと足を開いていった。彼女のこれまでの苦悩の歴史が刻まれたそこは、傷つき、疲れ、安らぎを求めて喘ぐように口を開いている。俺はゆっくりと顔を寄せ、敏感な突起にそっと舌を触れさせた。
「ああ…。」
いたわるように舐め続けていると、サユリの腰がだんだん大きく反応するようになり、無意識なのだろう、足が大きく開いていくと同時に膝が上がってきた。
俺は舌を這わせる場所を下へ下へとずらしていった。潤いきった谷間の壁や底、そして終点の泉へと到達したところで動きを止めた。それまでキツく目を閉じて感じるに身を任せていたサユリが少し目を開いた。俺は彼女に見えるように一枚一枚脱いでいき、やがてサユリと同じ姿になった。
被せものはいつも持ち歩いている。それを装着し、カラダを重ねた。
唇を合わせると同時に先端をあてがい、舌の侵入と腰の動きをシンクロさせて体重をかけると、俺を信じ切って力の抜けているサユリの中へとスルリ、っと吸い込まれた。
「僕が君を満たしてあげるよ。全てを僕で埋める。だからサユリ、安心して受け入れてくれ。」
「はい…。」
一つになった二人は、穏やかに触れ合い、互いを慈しみ、やがてその時を迎えた。
「ああ、あなたが私の中に居る。私は今、最高に満たされている。ああ、ああ、下腹部からカラダ中に情欲の波がジワリと広がっていくわ。こんなに、こんなに心をとろかす…ああ、これが本当のオンナの悦びなのね。ああ…。」
「そうだよ、サユリ。これが、これこそが君の望んでいた愛され方なんだろ?さ、ゆっくりと味わって。そして、ああ、僕も…。」
二人はしばらく重なり合ったまま動かなかった。微かに震えながら。
サユリが瞼を開いた。
「私、やっとオンナになれた気がする。ありがとう。こんなに幸せな気持ちは初めてよ。」
「ありがとうなんかじゃない。僕と君の二人の悦びなんだ。可愛いよ、素敵だよ、サユリ。あ!」
「あ?」
俺は天井を指差した。
「カメラ…。」
「ふふ、今日の記念に消さないでおこうかなー。」
「ちょ、誰かに見られたらマズくないですか?」
「なんてね。大丈夫、すぐ消すわ。それに、パスワードは私しか知らない。」
「ホントに消す?」
「ふふぅ、どうしよっかなー。」
「前言撤回。やっぱり可愛くないかも。」