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《夏休みは始まった》
【鬼畜 官能小説】

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〈戻れない夏〉-2

「暑〜い……ふぅ…山って夏でも涼しいってイメージだったのにな……」


麻衣の直ぐ後ろにいる女性は木駒里奈という名で、二つ後輩の二年生。

まるで中学生のようなショートヘアで、その真っ黒な髪は麻衣にも負けない白い肌を引き立たせる。
身長の低さと幼い顔立ちが災いしてか、その髪型と相まって本物の中学生のようにも見え、去年の夏休みには高校生にナンパされるという苦い経験も味わっていた。

白いTシャツの上に黄色いYシャツを羽織り、紺色のジーンズを穿いた姿はやはり夏休みの中学生であり、太めの眉に化粧っ気のない顔もまたあどけないの一言に尽きる。

つぶらな瞳にやや大きめな鼻。
そして上唇の先端だけがチョコンと突き出た唇。

悪気のない麻衣に「コアラ」と言われて、顔を真っ赤にして反論したのはかなり前の話だ。



「あ〜、やっぱり圏外なんだ。こんな山奥じゃ仕方ないかな……」

「スマホ持っててもしょうがないからバッグに仕舞っちゃうか」


里奈の後ろには二人の女性が並んで歩いている。

麻衣よりも明るい髪をショートにしている女性は麻衣の一つ後輩の橋下奈々未といい、その隣の女性は秋下真夏という同学年の大学三年生だ。

奈々未は麻衣に負けぬくらいに顔立ちは整っており、精悍な瞳とやや鷲鼻な顔は、勝ち気な性格と誤解されても可笑しくはない。
だが、ピンク色のYシャツを着こなせるほど表情は柔和であり、ライトブラウンのホットパンツによって晒された脚線美は艶かしさに満ちていた。

そんな奈々未の隣で、申し訳程度のカールを掛けたブラウンの長髪を靡かせるのは、愛くるしい笑顔を保ったままの真夏である。

麻衣や奈々未のような凛々しさとは真逆の容姿をした真夏は、クリッとした瞳とチョコンとした鼻、そしてやや大きめな口をしている。
奈々未と同い年には見えないくらいに幼さを感じさせる童顔は、綺麗というより可愛らしいといった方が似つかわしく、真っ白なワンピースがより可愛らしさを引き立たせていた。



「奈々未、どんな旅館か楽しみだね?」

「うん。そう…ね」


最後尾を歩く二人に他人からの視線はない。
真夏は奈々未と手を繋ごうとするも軽く窘められ、少し残念そうに苦笑いした。


真夏は奈々未が好きだった。
それは友達の枠を超えた恋愛対象としての〈好き〉だ。

もちろん真夏は自分の想いを伝えていた。
でも、まだ明確な答えを奈々未の口から聞けないままだった。

当然の事ながら二人の関係を知る者は二人しかおらず、真夏は今回の小旅行で決着をつけたいとの決意を秘めていた。





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