♠刺激的な女♠-6
「つーか松本は!?」
俺が詰め寄っても美女は至って涼しい顔。
「あの娘なら帰ったわよ。吾郎と天慈が車で送って行った」
「えっ、吾郎と天慈って……小野寺くんとあの怪しい男でしょう! あいつらが送って行ったんですか!?」
「怪しいって……まあ、あいつら怪しくないって方がおかしいけど。大丈夫よ、吾郎は運転も慎重だし」
「いや、そういうこと言ってるんじゃなくて!」
松本をあの野獣どもと一緒にするって事は、ライオンの群れの中に肉を放り投げるようなもんなんだよ!!
話の通じない美女にしびれを切らした俺は、彼女のブラウスの襟ぐりを掴み上げるとガクガク揺すった。
「松本があいつらに襲われてしまうってことを言ってんスよ!!」
ネットでの書き込み。昼間店で聞いてしまった、小野寺くん達の怪しげな会話。
間違いなく松本は、あの胡散臭い男に食われてしまうんだ!!
「…………」
俺の剣幕に、呆気に取られていた美女は、ポカンと口を開けてこちらを見ていたけれど、やがて頬を膨らましていく。
そして、 風船が弾けるようにブハッと噴き出すと、ついに豪快に笑い出した。
「な、何がオカシイんですかっ!!」
「だって、あんたがトンチンカンなこと言うから……」
「はぁ!? 俺は至って真剣に……」
皆まで言い終わる前に、突然リビングのドアがガチャリと開く音がした。
反射的に音がした方を見ると、見覚えのある顔。
ネットで散々調べた敵の姿が、今、目の前に立ちはだかっていた。
俺と同じくらいありそうな背丈に、ガッシリした身体つき。
口ヒゲなんか生やしやがって、ワイルドなチャラ男め。
俺と目があったチャラ男は、みるみる内に目を見開いた。
やんのか、コラ!!
舐められてはいけないと、眉間にシワを寄せて思いっきりガンを飛ばし返すのだが、
「よかったぁ、アナタ、目が覚めたのねっ。心配してたんだからぁっ!」
と、男は目尻に涙を浮かべて満面の笑みで、俺に向かって両手を広げてきた。