♥なかなか素敵な男♥-9
あたしの反応で言わんとしていることを察知したヒロさんは、すぐさま小野寺くんと天童さんの方を見やった。
「ほら、あんた達は席を外してよ、この子の採寸ができないじゃない」
「ああ、そうね。ごめんなさい」
二人はポンと手を合わせてから、スタッフルームがあると思しきドアの方へ向かって行った。
途中、なんかまたお菓子作りの話で盛り上がっているようで、大人の男二人は、キャッキャウフフといちゃつきながらドアの向こうへ消えていった。
いやいや、お気遣いはありがたいんですが、あたしの言わんとしている所はそうじゃなくて……。
「さ、まずはそのヒラヒラしたカットソーを脱いでもらうわ」
「あの、ちょっと待っ……」
いくら見た目が女でも、男と知ってしまった以上、すんなり服なんて脱げるはずがない。
とっさに防衛本能が働いて、腕を抱いて身をよじらせるあたしに、ヒロさんは不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。
「ちゃんと採寸しないと思い通りの服が作れないのよ! グズグズしてないでさっさと脱ぎなさい!!」
「だって、心の準備が……!」
「もう、別にあんたのハダカに興味があるわけじゃないんだから、手間取らせないで! これだから女はっ!」
言いながら彼はあたしのカットソーに手をかけてくる。
その手はとても白くて美しかったけど、骨ばっていて大きくて、やっぱり男の手だ。
やだ、怖いっ!!
必死に彼の手を振り払おうとするけれど、その力の差は一目瞭然。
「やっ、やだ!!」
「ほら、早く脱げよ!」
抵抗するあたしに、苛立ちを露わにしたヒロさんはついに本性を出した。
やっぱ、この人立派な男じゃん!!
そして精一杯の抵抗も虚しく、
「ほらあっ!」
「いやーーーっ!!!」
あたしのカットソーが宙を舞うのと、店中に悲鳴が響くのは、ほぼ同時であった。