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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♠刺激的な女♠-1

悲鳴……。


タクシーの料金メーターにハラハラしながらたどり着いた美容院“blue tears”は、思っていたよりも小さな店構えだった。


住宅街の中にひっそりと佇むその店は、寝静まった街の中で未だ煌々と光を放っていた(もちろんカーテンは閉め切っていたが)。


そんな中、聞こえてきた女の悲鳴にブワッと鳥肌が立つ。


あれは間違いなく松本の悲鳴だ……!


ツウ、とこめかみに流れる一筋の汗。唾を飲み込む音がやけに響く。


小野寺くんとあの胡散臭い男。


その二人に飛び掛かられたら、小柄な松本はなす術もないはずだ。


想像したくもないのに、いやな想像が勝手に脳内を駆け巡る。


松本の泣き叫ぶ顔。絹を裂くような悲鳴。それを嘲笑う男ども……。


想像したくなんてないのに、ドラマや映画なんかでヒロインが悪党に襲われるシーンが勝手に松本の姿とダブらせて脳裏によぎってしまう。


ギリッと奥歯を噛み締めた俺は、そんな想像を振り払うように、ブンブンと頭を横に振ってから店に向かって走り出した。


今、助けるぞ松本!!







閉店時間はとっくに過ぎていたので、自動ドアはもちろん開かなかった。


音を立てないように手動で開けたドアには、俺の汗ばんだ手形がクッキリ。


物音を立てないように店に入れば、ツーンとパーマ液の匂いが鼻についた。


ゴクッとまた唾を飲んで中の様子を窺えば、怒鳴るような男の声が店の中に響き、思わず身体がビクッと強張る。


「手間取らせんな、コラァッ!」


「やだってば、やめてくださいっ!」


「ここまで来たらもういいだろうがっ! ほら、そのスカートも邪魔くせえから脱げっ!!」


「いやあっ!!」


これ、マジでヤベえじゃねえか!


さっきのいやな予感が再びよみがえってしまい、背中に冷たい汗が流れてくる。




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