チ-5
私の願いとは裏腹にエレベーターはいつもの倍遅いような気がして
「え〜。安達さん一緒に行きましょうよ」
おねー様たちがそうたたみかけた。
「高橋さんも一緒に行けばいいじゃない?」
昼間、会議室の前で安達さんの隣にいた綺麗な人だ!
声は優しいのに、視線が痛い!
イヤです。イヤです!絶対に嫌です!
涙目になって安達さんを見つめれば
その私の顔にプッと笑って
「今日はパス」
そう言いきってくれた。
良かったけど。良かったけど!
1番良かったのは、私を無視してくれることでしたよ。
こんな狭いエレベーターで名前呼びはキツイです!
1階に着くころには針のむしろで
人生で1番長いエレベーターでした。
ぐったりしてエレベータを降りれば
いつの間にか隣に来た安達さんが私の手を握って
「じゃ、また明日な」
なんてみんなに別れを告げていた。
引っ張られるようにその場を離れる間際
私は、急いで頭を下げて挨拶したけど
顔をあげた瞬間、綺麗な例のおねー様と視線があってブルッと震えた。
「安達さん・・・」
「ん?」
「社内であれはヤバくないですか?」
「なんで?」
「なんでって、みんなにばれちゃいますよ」
「うん。社内恋愛は遅かれ早かればれるからな
自分からばらした方が印象いいんだよ」
本当ですかぁ〜?