新たな未来への芽生え-2
「にしても彼、少しは良かったの…かな?」
「そうねぇー。」
いつもの薄暗くもそれが楽しい雰囲気にさせてくれる館内で、無数に優雅に泳ぐ魚たちを見上げながら、友人の吉報についてまったりと語る。
「あぁ、どうにか登校いや復帰出来そうかな。」
学校帰りに彼の提案で佐伯君の家へ寄り。
「…未だ引き籠ってるのかな。」
「まぁ…あんな事があったから。」
目的地へ向かう途中もそんな不安を口にし合ってたけど、そんな私たちの予想を遥かに裏切ってくれて、インターホンを押し無言の返答が来ると諦めていたら、普通に元気な声を耳にして。
応対してくれた彼の姿はお世辞にもあの明るい無邪気な彼とはまだほぼ遠く、かと言ってゲッソリと痩せている訳でもなく。満開寸前のつぼみのようにも見えた。
「そっか、それは良かった。」
「あぁ…。」
「佐伯君。」
過去の過ちについては一切口にはせず、他愛もない談笑をまるで立ち話に盛り上がるご近所の奥さんのように部屋へあがるでもなく玄関口でやり合い。
「でも無理はしないでね。」
「あぁ!」
「いつでも力になるから、また一緒に学校に行こう!」
そう優しくも暖かい言葉を彼に添える風馬君、やっぱ良いなぁー♪
友人の元気を確認し軽い足取りで彼の家に背を向け後にして。
何気にもう一度振り返ると。
「ん?」
一階建てのボロアパートの彼の隣の部屋から一人の女の子が出てきて、佐伯君の家へ近寄る。
「……。」
そわそわとドアを見上げる彼女。
誰だろう。
風馬君が投げた魚の餌にバクバクと食いつく水槽の鯉たち。
「ホント、良かったよ。」
「風馬君…。」
あの事件は今でも忘れない、とても衝撃的だったし故に心配に思うのは当然の事。
けれどあぁして元気に立ち直って、彼も友人として安堵の表情を浮かべる。
「風馬君は本当に彼の事が大好きなんだね。」
「うん、……君の次にね。」
うふふ❤
「君もやるかい?」
残っている魚の餌の入った袋を私に手渡す。
「うん!やるやる。」