夫の計画-1
ピンポーン…
「ただいま〜」
「お帰りなさーい」
香織は帰宅した衛を玄関で出迎え、衛に絡み付くように腕を組んで廊下を歩いた。
「ごめんなさい、ご飯未だ出来てないの。もう直ぐだから先にお風呂入ってきて…」
そう言うと香織は小走りにキッチンへ向かった。
昼間…香織は何度逝っただろう。
気が付けば5時を過ぎ…慌てて買い物に行き、夕飯の支度を始めたのだった。
風呂からあがった衛はソファに座った。
キッチンでは、香織が鼻歌混じりに支度をしている。
「香織?今日何か良いことあった?」
と衛はTVを視ながら尋ねた。
「え?…い、いいえ…いつもと同じよ」
香織は顔を赤らめて答えた。
「そうなの?ご機嫌だからさ、何か楽しいことあったのかなって」
(はは…香織は分かりやすいな。今朝あげたヤツ使いましたって顔に書いてある)
衛は気付かないふりをして答えた。
「はぁい、お待たせ〜。衛さん、食べよっ」
何事もなかったように香織が言った。
「おぉっ、美味そう。腹ペコだよ、頂きまぁす」
食事中、香織はネットで調べたインドの習慣や観光スポットなど、自慢げに衛に話をし、楽しい時を過ごした。
お茶を淹れ、テーブルでほっこりしたとき、衛が口を開いた。
「ところでさ、今朝のプレゼント…気に入ってくれた?」
ゴホッ…ケホッケホッ…
香織は飲みかけたお茶に咽せながら、
「えっ…あ、ああ…あれ?知らないっ、衛さん、エッチなんだから…」
と不機嫌そうに答えた。
「そうかぁ…気に入ってくれると思ったんだけどな…」
衛が残念そうに言った。
「あんなの私には必要ないから、押入れにしまっちゃったわ」
顔を真っ赤にして香織が答えた。
「気に入らなかったか…じゃあさ、アレ明日返品してこようかな…」
衛が意地悪く言うと、
「えっ⁉…い、いいわよ、そんなこと。衛さんだってまたそういうお店行くの嫌でしょ?」
(今さら返すと言われても出せるわけないし、それに…気に入っちゃったんだもの)
と香織は何とか取り繕って答えた。
「そうか…それもそうだね」
(よし、第1段階クリアだな…しかし香織って見事に思い通りに動くよね)
吹き出しそうになるのを堪えながら、衛は言った。