♥偏見を持つ男♥-2
自分が恵まれた人間だっていう自覚はあった。
容姿も結構レベル高いし、正直、男の子からもかなりモテる方だと思う。
オシャレが大好きで、メイクも大好き、休みの日はショッピングをしたり、可愛いお店を回ったり。
友達だって可愛い女の子ばかりだから、合コンのお誘いもしょっちゅうだし。
小夜さんは、あたしのこういう所を知ってるから、単純に羨ましいと言えるんだ。
でも……。
「そんないいもんじゃないですよー。あたしからすれば小夜さんの方がよっぽど羨ましいもん」
ケラケラ笑ってそう言うと、小夜さんは意外そうに目を丸くした。
「何言ってるの!? モデルのお誘い来るくらいの外見、あたしがむしろ変わって欲しいくらいだよ? もー、いつも里穂ちゃんの隣で悲しい思いしてるの知らないでしょ。顔の大きさが違い過ぎてさ」
そう言って小夜さんは顔を手で覆い隠す真似をしておどけてみせるから、あたしもクスクス笑って見せる。
でも、羨ましいってのは事実だよ。
「だって、小夜さんは駿河さんにあーんなに愛されてて……。付き合ってもう2年になるんです、よね? マンネリなんてまるで感じさせないもの」
「あ……っと、それは……」
途端に顔を赤くして、言葉の歯切れが悪くなる彼女。
でも、その表情を見れば幸せですってのが一目瞭然だ。
小夜さんの彼氏の駿河さんって人は、2年ほど前までこのスウィングでアルバイトをしてた人だ。
小野寺くんほどじゃないけど、なかなかカッコよくて、仕事も出来て、あたしがバイトに入ってすぐ、狙ってた男だった。
だけど駿河さんは、誰が見てもわかるくらい小夜さんの事を好きで。
でもそれをなかなか素直に表現できない駿河さんは、付き合うまでは小夜さんと喧嘩(という名のじゃれ合い)ばかりしていて、そんな関係がずっと羨ましかったんだ。