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bitter bitter sweet
【コメディ 恋愛小説】

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♥偏見を持つ男♥-1

「じゃあ、バイト終わる頃に迎えに来るから。あ、あと天童さんも僕と“同じ”だから安心していいからね」


「えー、そうなんだ。うん、わかった」


小野寺くんは、レジがひと段落ついた頃を見計らって、あたしにそう言ってから、さっきのお客さんと一緒に店を出て行った。


小野寺くんとあの男の人ーー天童さんって言うらしいーーの後ろ姿を見送った後は、四つ折りという紙ナフキンにスティックシュガーとマドラーを包む。


これは、テイクアウト用に使うやつだ。


一方隣では、小夜さんがウォッシャーから、洗いあがったスプーンの入った入れ物をカウンターに置いて、吹き上げを始める所。


お客さんの流れも途切れたのでカウンターに並ぶあたしと小夜さんは、ちょっとした雑談を始めた。


「何、今日のバイトが終わったら小野寺くんとデートするの?」


小野寺くんがオネエだってことを知らない小夜さんは、あたしと小野寺くんがいい感じになっている、と思っているらしい。


目を輝かせて話しかけてくるその顔は興味深々って感じだけど、あたしは笑ってそれを否定した。


「あはは、そんなんじゃないですよぉ。なんて言うか……さっきの小野寺くんと一緒にいた男の人、美容師で、今度コンテストに出るから、そのモデルやってくれないかって……。それで今日バイト終わったらその美容室でコンテストの説明とか打ち合わせをしたいって」


「へえ、すご〜い!」


すごい、か。すごいんだろうなー。


何せあの男は雑誌によく載ってる超有名な“blue tears”って美容室の店長だっていうから。


しかも、小野寺くんとはタイプの違ったイケメンだし、ホント小野寺くんの交友関係の華やかさには毎度の事ながら舌を巻く。


「ホント、里穂ちゃんって羨ましいな。可愛くて、スタイルもよくて、そういうモデルとか頼まれる機会とかもあって。あたしなんか想像もできない世界だよ」


ワクワクした感情が声に込められた小夜さんの話ぶりに、あたしはピクリと耳が動いた。


羨ましい?






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